問題視されるLPガス業界の商習慣、是正に向けた制度改正の内容が具体化法制度・規制(4/4 ページ)

» 2023年05月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4       

無償配管(貸付配管)とはどのようなものか?

 WGでは、無償配管の問題は、分譲(建売)戸建住宅を前提として議論されているが、実際には、集合住宅(賃貸・分譲)においても生じる問題であると考えられる。

 無償配管(貸付配管)とは、住宅新築の際に、工務店や建設業者が、提携先のLPガス事業者に無償で消費配管の屋内工事をさせる商慣行である。結果として、配管工事費は住宅建築費には含まれず、住宅価格が安く見えることとなる。

 この場合、配管工事を行ったLPガス事業者が消費配管の所有権を持ち、住宅完成後は当該LPガス事業者が、LPガスを供給することとなる。消費配管の「貸与契約」の契約期間は10〜15年、金額は20万〜30万というケースが多く、20年・40万円というケースもある。

 通常、消費者は住宅の購入決定後に初めて、LPガス会社がすでに決まっていることや、貸付配管の費用を長期にわたって支払わねばならないことを知ることとなる。

 石油ガス流通・販売業経営実態調査(2022年度)によれば、無償配管の「実績がある」と回答したLPガス事業者は87.2%に上る。

 貸与契約期間内にLPガス会社を変更する場合、当該消費者にガス設備等の買取義務が生じ、LPガスを利用した期間に応じた買取代金を支払う必要がある。

 本来、住宅新築時点で支払うべきであった金額とはいえ、一度に多額の精算金を支払うことは、消費者にLPガス事業者の変更を思いとどまらせることとなり、LPガス会社の選択・変更を妨げる一因となっている。これは事業者間の競争を制限する要因となり、競争政策の観点からも問題となる。

 なお注文住宅では通常、住宅建築の注文時に自らの意思でLPガス会社を選択しており、配管貸与契約を結ぶか否かも消費者自らの選択であるため、本件が問題とならない。

 解約時の貸付配管の精算について、消費者側が支払いを拒否することがあり、年間で十数件程度の訴訟が発生している。年間100万件程度と推定されるLPガス事業者の切替件数と比べるとわずかであるものの、水面下での争いはさらに多いと考えられる。近年の裁判では、LPガス事業者側が敗訴する事例が大半となっている。

図6.裁判例の判断の傾向のフローチャート 出典:石油ガス流通・販売業経営実態調査報告書

 WGでは、分譲戸建住宅においてLPガス事業者切替時のトラブル防止のため、LPガス料金の積算根拠を説明するための三部料金制の徹底を求めることや、消費配管については家主に所有権を保有させるよう商慣行を変更していく方針を示している。

 なおWGでは、無償配管(貸付配管)の問題を、LPガス事業者間のスイッチング(切り替え)という観点のみで捉えているが、LPガスでは「オール電化」への転換ということも多いと考えられる。

 消費配管の「貸与契約」の解約に伴い、一括精算を求められるならば、その消費者は、太陽光発電パネルの新設を伴うオール電化への転換をためらうこととなり、オール電化への転換を見送ることも懸念される。

 住宅(戸建・集合)の再エネ導入に対するブレーキとしないという観点からも、LPガス商慣行の適正化が求められる。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR