問題視されるLPガス業界の商習慣、是正に向けた制度改正の内容が具体化法制度・規制(3/4 ページ)

» 2023年05月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

賃貸向けLPガス料金での消費設備費の計上を禁止に

 高額化・大規模化する「無償貸与」という名の営業行為・過当競争は、すでにLPガス事業者を疲弊させる一因となっている。

 そもそも、ガス機器やエアコン等の機器を集合住宅オーナーに対して無償提供(貸与)することは、不公正な取引方法(不当な利益による顧客誘引)として、独占禁止法上の問題を生じることも考えられる。

 このためWGでは、賃貸集合住宅向けLPガス料金については、消費設備(消費配管・ガス機器、ガス以外の機器)費用の計上を禁止する方針が示された。LPガス事業者においても、自主的な取組だけでは実効性が期待できないとして、法律による規制に対して歓迎の意を表している。

 なお、現在の無償貸与の多くが、集合住宅オーナーや不動産会社主導によるものであることを踏まえれば、国土交通省を通じた不動産関連業界への周知が必要となる。円滑な制度移行のため、新たな規制の導入には、十分な経過措置期間が設けられる予定である。

図3.賃貸向けLPガス料金での消費設備費の計上禁止 出典:液化石油ガス流通WG

不動産業者によるLPガス料金情報提供の徹底

 現状では、賃貸集合住宅への入居者の大半は、入居したのちに初めてLPガス料金を知ることになる。集合住宅では入居者個人がLPガス事業者を変更することは事実上不可能であるため、消費者には選択の機会が無く、消費者保護の観点から問題がある。

 このため、入居後のトラブル防止のため、経産省と国交省は、不動産仲介業者から入居希望者へLPガス料金の情報提供を要請する通知を、2021年に発出済みである。

図4.賃貸集合住宅における入居前のLPガス料金情報提示の取り組み 出典:液化石油ガス流通WG

 今回、LPガス料金の情報提供の実態について、アンケート調査を行った。エルピーガス振興センターによるLPガス事業者向け調査の結果、不動産管理会社等へのLPガス料金の情報提供について、「情報提供済み」との回答は17.0%、「一部情報提供済み」との回答は35.2%であった。

 また国交省によるアンケート調査では、LPガス事業者等からLPガスの料金等の記載のある資料を受領したことがある割合は、不動産管理会社で33.8%、賃貸住宅オーナーで24.7%、宅地建物取引業者で19.1%であった。

 LPガス料金の情報を授受するLPガス事業者、不動産事業者は、いずれも2〜3割に留まることが明らかとなった。

 今後、LPガス事業者、不動産事業者に対する再周知と継続的なフォローアップ調査が予定されている。

図5.LPガス料金情報提供のアンケート結果(不動産管理会社) 出典:国土交通省

 なお現在、集合住宅・戸建住宅いずれにおいても、住宅の選択・検討にあたって、大半の消費者はいわゆる「住宅ポータルサイト」を利用していると考えられる。すでに大手の住宅ポータルサイトでは、検索条件の一つとしてLPガス(プロパンガス)であるかを選択可能であるが、今後その料金水準(具体的な金額)や、事前の料金情報の提供有無(Yes/Noの2択)についても、掲載が進むと消費者の利便性が高まるのではないだろうか。

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