問題視されるLPガス業界の商習慣、是正に向けた制度改正の内容が具体化法制度・規制(2/4 ページ)

» 2023年05月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

「無償貸与」とはどのようなものか

 ガス機器等の無償貸与は、賃貸集合住宅において問題となる商慣行である。賃貸集合住宅では、通常、各部屋の入居者が個別にLPガスを契約することは出来ず、集合住宅全体で1つのLPガス事業者と契約される。LPガスは自由化されたエネルギーであるにも関わらず、賃貸集合住宅の入居者自身は、LPガス事業者を選択・切替することは出来ず、集合住宅のオーナーがLPガス事業者を選択し、独占的な供給契約を締結することとなる。

 このため、長期安定的なLPガス供給契約獲得のため、1960年代半ばから営業活動の一つとして、賃貸集合住宅のオーナーに対してガス給湯機等を無償提供(無償貸与)することが始まった。近年では、オーナーや建設業者から機器の無償貸与が要求されており、その対象もエアコンやインターホン、Wi-Fi機器、防犯カメラといった様々な製品にまで広がっている。

 このように、LPガス事業者にとって実質的な「顧客」とはオーナーであって、LPガス料金を支払う入居者の利益は顧みられない状態となっている。

無償貸与の解決策の第一歩「三部料金制」

 賃貸集合住宅における給湯器、エアコンなどの設備は、本来であればオーナーが購入し、入居者からの家賃として回収すべき費用である。

 ところが現状では、LPガス事業者の約6割が、賃貸集合住宅のオーナーや建物管理会社からの要求に応じて機器の無償貸与をしており、LPガス事業者はその費用をLPガス料金に上乗せして入居者から回収している。

 このような現実を踏まえ、2017年の液石法省令、運用・通達の改正及び取引適正化指針の制定では、まずはLPガス料金の内訳を開示するため、「三部料金制」を導入することとした。三部料金制とは、通常の基本料金と従量料金のほかに、設備利用等料金を明示するものであり、義務ではなく自主的な取り組みである。なお設備利用等料金には、後述する「消費配管」の費用も含まれる。

 集合住宅への入居前に、設備利用料を知った消費者は、その集合住宅への入居の判断材料とすることが可能となる。

図2.三部料金制の仕組み 出典:エルピーガス振興センター

 しかしながら、石油ガス流通・販売業経営実態調査(2022年度)によれば、三部料金制を「適用している」事業者は12.5%、「一部適用している」事業者は20.8%に留まっている。

 LPガス事業者が自主的に三部料金制を適用したところ、オーナーが負担すべき費用を入居者に負担させていることが明らかになることから、オーナーからの反発により二部料金制に戻さざるを得なかった事例も報告されている。

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