急速充電の導入障壁とは? 業界団体・関連企業から見たEV充電器の普及課題電気自動車(2/4 ページ)

» 2023年07月19日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

EV車両の充電口位置の課題

 現在、EV車両の充電口位置はEVメーカーにより異なり、車体の左側/右側(さらに前後)などさまざまである。

 よって、公道等に充電器を設置する場合、なるべく多くの車両に対応するためには、充電ケーブルを長くせざるを得ない。しかしながら、特に急速充電用ケーブルは太くて重いため、長いケーブルはユーザーの利便性が低下する一因となるほか、乱雑にケーブルを格納すると道路や歩道にはみ出た状態となり、通行時の安全面で問題が生じ得る。また、公道への充電器設置協議において、右側充電口の車両はコネクターが道路側にはみ出るため、安全上の課題がある。

 このため、公共充電サービス大手のe-Mobility Power社では、EV車両の左側(又は前側)に充電口を設けることが、安全性・利便性から望ましいと報告している。

図3.コネクターが道路側にはみ出るおそれ 出典:e-Mobility Power

充電の課金体系の課題

 現在日本では、多くの充電サービス事業者において、充電時間の長さによる課金(時間課金)が行われている。このため、高出力充電器がコスト面で不利となり、事業者による充電器の高出力化投資を妨げる要因となっていることが課題として指摘されている。

 通常、電力会社から充電サービス事業者(充電器)に対しては、基本料金と従量料金の二部料金制による課金がなされている。ユーザーニーズに応え、充電器の高出力化を進めるならば、高出力充電器の設置費用負担のほか、同じ充電時間でより多くの電力量(kWh)を充電できるようになるため、充電サービス事業者のコストは増加してしまう。

 対策として、時間課金の単価を上げる方法もあるが、その場合、充電出力の低い車種のユーザーにとっては、受け入れがたい値上げとなるおそれもある。

 諸外国ではすでに、充電電力量(kWh)による課金が主流であることも踏まえ、日本においても、kWh課金(従量制課金)へ移行することが提案されている。ただしこの場合でも、充電出力を大きくするほど、充電サービス事業者の充電器費用や、電力基本料金負担が増すこと自体は変わらない。

 仮に、充電サービス事業者A社では出力50kW、B社では150kWのとき、A社で3時間、B社で1時間充電するならば、充電量はいずれも150kWhとなる。両社の従量単価が10円/kWhと同じならば、両社の収入は同じ1,500円となるが、両社のコストは大きく異なる。

 これでは、B社が充電器を高出力化しようとするインセンティブは無いと思われる。仮にB社が従量単価を値上げするならば、今度はユーザーが、充電時間の短さと単価(支払総額)のバランスにより、両社を比較することになると予想される。

 課金体系については、シンプルで分かりやすいものが大前提であるものの、EV社会の将来像を見据え、持続可能なものであることが望まれる。

旅行・宿泊先での充電の課題

 日常の移動については、自宅や職場における基礎充電でカバーされるとしても、旅行等による遠方目的地での充電の保証がないことは、EV購入の障壁となってしまう。

 全国旅館ホテル生活衛生業組合連合会(全旅連)の調査によると、同組合員15,000宿泊施設(旅館・ホテル)のうち、EV充電器を設置している施設は25%に留まることが明らかとなった。このうち、設置基数は1基のみが過半数を占め、その大半が2012年の補助金を使用した3kWの普通充電器である。

図4.充電器設置あり宿泊施設の設置基数 出典:全旅連

 全旅連組合員の宿泊施設客室数は約71万室であり、全旅連では、2030年時点で室数の10%程度、約7万基の充電器が必要になると予測している。

 また、宿泊者から見れば、宿泊先にただ充電器があるだけでは十分ではなく、宿泊予約と同時に充電器の予約を行うことにより、充電器を確保することが重要となる。このため宿泊施設と充電器の予約管理が整合的に成立するシステムが必要となる。

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