設置の遅れが指摘されることも多い日本国内のEV充電インフラ。設置拡大に向けた方策を検討する経済産業省主催の「充電インフラ整備促進に関する検討会」の第2・3回会合では、自動車関連団体や充電事業者、充電器設置者等に対するヒアリングを行い、充電器普及の課題等が報告された。
国のグリーン成長戦略では、EV普及のため、2030年までに充電インフラを15万基(公共用の急速充電器3万基を含む)設置することを目標としている。
2022年度末時点では、普通充電器の設置数は約2.1万基、急速充電器は約0.9万基に留まるため、経済産業省は、「充電インフラ整備促進に関する検討会」を設置して、課題解決に向けた検討を進めている。
検討会では、その第2回、第3回会合において、自動車関連団体や充電事業者、充電器設置者等に対するヒアリングを行い、充電器普及の課題等が報告された。
EV充電器は、普通充電器と急速充電器に大別されるが、日本では、普通充電では3kW充電器が大半を占めるなど、普通/急速のいずれも低出力のものが多いことが課題とされる。
米国では、普通充電器は6kWを供給出来ること、急速充電器では同時に150kWまで供給できることが設置要件として求められており、車両側でも普通:6kW、急速:150kWがデファクトスタンダードになりつつある。
国内では、EV普通充電器の安全・安心を担保することを目的として、一般財団法人日本自動車研究所(JARI)が第三者認証制度(JARI認証)を2012年度より実施している。
現在、IEC規格において日本の定格電圧は250V・定格電流が32Aとなっていることから、規格に沿う形でJARI認証基準では電圧200V×電流30A(=6kW)が、普通充電の基準として設けられている。米国・韓国では電流上限が80Aまで緩和されており、16kW(=電圧200V×電流80A)が基準とされている。
高出力化のニーズを踏まえ、JARIでは10kW(=電圧200V×電流50A)への引き上げを検討中であり、年度内の基準見直しを目指している。
上限電流30Aの引き上げが「50A」に留まる理由としては、電気用品安全法の対象が「50A以下」であるためである。このため、JARIでは国に対して、50A超の取り扱いに関する法令整備を要望している。
政府目標の2030年急速充電器3万基のうち、1万基はSS(サービスステーション)へ設置することが掲げられている。これに基づきENEOSでは、SSにおける急速充電器設置数を現在の約170基から、2025年度には1,000基、2030年度には5,000基とする目標を掲げている。
安全性の観点から、SSにおける急速充電器設置については、消防庁から「給油取扱所に電気自動車用急速充電設備を設置する場合における技術上の基準の運用について」が公布されている。
この規制に準拠する場合、図2では青色の網掛け部分にのみ、急速充電器が設置可能となる。よって、敷地面積が1,000m2以下の中小規模SSには設置が難しいため、ENEOSでは現時点、大規模SSに絞り、急速充電器の設置を進めている。
ENEOSでは、同社SS全体の約7割(約8,000件)が1,000m2以下であるため、中小規模SSへの急速充電器設置において、規制緩和の可否の検討が必要とされる。
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