次に水素を実際に社会に普及させる上での課題を、供給サイドと需要サイドの視点から見てみる。
供給サイドの課題としてまず挙げられる点として、水素の調達・供給コストが高いことがある。図2に示した通り、2021年および2030年いずれにおいてもグリーン水素はブルー水素に対して割高であると試算されている(CCSをせずに化石燃料から生産されるグレー水素に対してももちろん割高である)。
ただ、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、化石燃料の高騰に伴いグレーおよびブルー水素のコストが上昇したため、再生可能エネルギーにめぐまれている国や地域によってはグリーン水素の方がグレー/ブルー水素よりコスト競争力を持っている可能性があることに留意する必要がある。しかしながら、日本をはじめ多くの国や地域において、グリーン水素はグレーおよびブルー水素に比べて割高であり、水素社会普及にあたってはさらなる価格低減が不可欠である。
需要サイドの課題として挙げれられるのが、現状、水素自体のエネルギーとしての需要量が少ない点がある。水素用途の大分類として電力、非電力(燃料)、非電力(原料)が想定されているが、燃料電池自動車(FCV)が実用化されている程度で、本格化するのはこれからである。課題は各用途で異なるが、共通して技術開発が発展途上であり、日本をはじめ各国でさまざまな技術開発が進められているのが実情である。
ここまで世界的な水素への期待の高まりや普及のための課題などを確認してきたが、次のページからは世界の経済主要国である欧州(EU)、米国、中国における水素の位置付けや、関連政策、将来動向を概観することで、水素に対する各国の思惑や今後の展望を推し量ることとする。
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