非化石価値を取引する2つの市場、その最新動向と今後の制度変更の見通し(3/5 ページ)

» 2023年09月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

2023年度第1回オークション結果

 2023年8月29日〜31日にかけて、日本卸電力取引所(JEPX)では、非化石証書に関する3つのオークションが開催された。

 まず、高度化法義務達成市場のうち、非FIT再エネ指定なし非化石証書の第1回オークション(8月29日)の結果は図3のとおりである。先述のとおり、2022年度には非FIT証書の売り入札量は激減し、買い入札量が激増し需給が逼迫したことにより、約定価格は、上限価格(1.3円/kWh)となったことが分かる。

図3.非FIT 再エネ指定なし非化石証書のオークション結果 出典:制度検討作業部会

 2023年度には売り入札量が回復すると同時に、単年度評価となった非化石目標を達成するために、小売事業者による買い入札量も大幅に増加した(2021年度第1回、2022年度第1回との比較)。

 高度化法義務達成市場では「シングルプライス方式」を採用しており、売り入札量が買い入札量を上回ったため、買い入札約113億kWhの全量が約定し、約定価格は最低価格と同じ0.6円/kWhとなった。

 次いで、高度化法義務達成市場のうち、非FIT再エネ指定あり非化石証書の第1回オークション(8月30日)の結果は図4のとおりである。売り入札量は多いものの、買い入札量は少なく(約6億kWh)、全量が約定し、約定価格は最低価格と同じ0.6円/kWhとなった。前日に、非FIT再エネ指定なし証書のオークションが開催され、小売事業者は当座の必要量を確保済みであったことが、一因と考えられる。

図4.非FIT 再エネ指定あり非化石証書のオークション結果 出典:制度検討作業部会

 2023年度第1回の最終日(8月31日)には、再エネ価値取引市場において、FIT証書のオークションが開催された。同市場では、小売電気事業者だけでなく、需要家や仲介事業者も購入することが出来る。

 今回から、同市場の最低価格が0.3円/kWhから0.4円/kWhへと引き上げられたにも関わらず、買い入札量は過去最高の約85億kWhへと増加した。売り入札量は約280億kWhであるため、買い入札の全量が約定した。

 なお、同市場では「マルチプライス方式」を採用しているため、「約定価格」とは「約定量加重平均価格」を意味する。これまでも同市場では大半が最低価格で約定しており、加重平均価格も最低価格0.3円と同額となることが通常であったが、今回の加重平均価格は0.41円/kWhと、最低価格0.4円をわずかに上回る結果となった。

図5.再エネ価値取引市場のオークション結果 出典:制度検討作業部会

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