非化石価値を取引する2つの市場、その最新動向と今後の制度変更の見通し(4/5 ページ)

» 2023年09月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

非化石証書トラッキングが増加傾向に

 非化石証書のうちFIT証書については、再エネ価値取引市場が創設された2021年以降は全量がトラッキングされており、非FIT証書についても順次トラッキング化を進めてきている。

 直近2023年8月分オークションにおけるFIT証書のトラッキング割当量は53億kWhに上るなど、トラッキング需要及びトラッキングの参加事業者は増加しており、今後も着実な増加が見込まれる。

図6.FIT証書トラッキング割当量の推移 出典:制度検討作業部会

 また、直近2023年8月分のオークションにおいて、太陽光発電FIT証書のうち福岡県産のトラッキング情報について、割当希望量(需要)が割当可能量(供給)を上回ることにより希望量の割当ができない状況も一部で発生している。

図7.太陽光FIT証書トラッキング都道府県別需給状況 出典:制度検討作業部会

非化石証書トラッキングの課題と今後の在り方

 現行制度では、市場取引分に係る非化石証書のトラッキングは、非化石証書の購入者に対し、希望する非化石電源の属性情報(電源種、所在地等)を約定後に無償で付与している。

 つまり、現在の非化石証書約定価格には、非化石電源の属性に応じた価値の違いが反映されていない。先述の福岡県産太陽光のように、需要が供給を上回るものについては、本来は価格差が生じることが自然なことであると思われる。

 このような状況を踏まえ、証書の購入者が入札時点で、希望する非化石電源の属性情報を明確化することにより、これを出来る限り証書価格に反映するよう、現行のトラッキング制度を見直すことが提案されている。

図8.非化石証書トラッキング見直しのイメージ 出典:制度検討作業部会

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