改正省エネ法の対応実務のポイント、2024年度からの報告・任意開示にはどう対応すべき?背景から実務の要点・今後のGXマネジメントまで解説(5/5 ページ)

» 2023年09月25日 07時00分 公開
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4.EEGSによる報告

 省エネ法の報告は、従来、紙媒体を各省へ郵送または持参する必要がありましたが、2022年より省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)にて報告できるようになりました。

 報告書作成にあたっては、EEGSに直接入力する方法と報告書作成支援ツールをアップロードする方法があります。いずれの方法も自動集計機能を兼ね備えており、使い勝手のよい仕様となっているものの、作業効率の観点でみると、それぞれの方法ごとに特徴を有しているため、事業者ごとの状況を踏まえ、適した作成方法を選択することが望ましいです。

データ入力のしやすさ

 EEGSに直接入力する場合、それぞれの項目欄を選択し、記入しなければなりませんが、報告書作成支援ツールで作成する場合、Excel形式で記入を進めることができます。事業所数が多い、事業所ごとに異なる電力会社の電力メニューを採用している等、記載箇所が多岐にわたる場合は、報告書作成支援ツールのほうが効率的に記入を進められます。

データ修正のしやすさ

 報告書作成支援ツールを用いて作成する場合、EEGSにアップロードすると、画面上での閲覧は可能ですが、そのまま修正することはできません。修正する場合は、報告書作成支援ツールで修正を行い、再アップロードを行う必要があります。

 一方、EEGSに直接入力して作成する場合は、各表単位でエラーメッセージやアラートも出るので、その場で記入ミスに気づくことができます。また、修正対応をそのまま画面上で行うことができるため、データ修正の観点ではEEGSにて直接入力するほうが効率的であると考えます。

作成・報告の一気通貫性

 報告書作成支援ツールを用いて作成する場合も、最終的にはEEGSにアップロードする必要があり、EEGS利用にあたっては、事業者情報を設定する必要があります。こうした情報は、報告書作成支援ツールにて既に記入している情報も含まれているため、作業の重複を避け、ワンストップで作成・報告を完結させるには、EEGSにて直接入力する方法をとるべきでしょう。

 なお、環境省にて公開されている電気事業者別排出係数が7月中旬に更新され、EEGSにおいても速やかに反映されました。その結果、この更新タイミングをまたいでEEGS入力による報告書作成を行っていた事業者は、EEGSへ電力使用量を再登録しないといけないという事象が発生しました。(※報告書作成支援ツールの場合、係数の更新は不要)

 電気事業者別排出係数は毎年7月中旬に更新されていることから、来年度も同様の事象が発生する可能性があります。EEGS直接入力によって報告書を作成する場合は、報告書作成のタイミングを調整することが望ましいでしょう。

5.改正を受けて求められるGXマネジメント

 ここまで見てきた通り、今回の省エネ法改正では、法令の名称とともに、その対応内容にも大きく変更が加えられました。なかでも特筆すべき部分としては、非化石エネルギーへの転換が付け加えられた点で、各事業者はカーボンニュートラルに向けた目標設定や活動内容の整理を行い、実行に移していく必要があります。

 カーボンニュートラルを実現していくには、省エネの推進に加え、再エネ電力をはじめとする非化石エネルギーを確保することが大原則となります。しかし、当然ながら、カーボンニュートラルに向けた活動は、自分たちだけでなくどの事業者も推進しているため、将来的な再エネ需給ひっ迫、ひいては、再エネ調達コストの高騰というシナリオもありえると考えています。

 こうしたことから、カーボンニュートラルという命題に向き合っていくには、競合他社に後れを取ることなく、むしろ先行して積極的に取り組んでいくことが肝要です。

 では、具体的に何をしていかなければならないのでしょうか。

 カーボンニュートラルを実現にしていくには、GX戦略ロードマップを策定したうえで、PDCAサイクルを回していくという「GXマネジメント」を実装していくことが重要であると考えます。

図15 GXマネジメントサイクル (アビームコンサルティングにて作成)

 カーボンニュートラルは、目標が2050年という非常に長期的な取り組みです。手当たり次第に取り組むのではなく、外部環境を踏まえ、どのような手順で何に取り組んでいくかというロードマップを策定することで、効率的かつ着実に推進することが可能になります。

 また、カーボンニュートラルの取り組みは、決して一部門だけでは担えるものではなく、全社一丸となって取り組んでいく必要があります。社員が同じ方向を向いて推進できるようにするという意味でも、ロードマップは重要な役割を果たすと考えます。

 一方で、中長期的なロードマップだけでは、目先の数年にどのようなアクションをとるべきか、スケジュールやタスク内容の詳細まで落とし込みできていません。したがって、ロードマップを示すと同時に、それにもとづいたアクションプランを策定し、短期的にはPDCAサイクルを回すことも重要となってきます。

 特に、今回の省エネ法改正も含め、カーボンニュートラルを取り巻く市場環境は現在進行形で目まぐるしく変化しているため、今後も制度面の動向に目を配り、市場環境の変化に対し柔軟に対応していくことが肝要です。

 実際、GXに関する支援をしているなかでも、どのような市場環境の変化があるか、また、その変化に対してどのような対応をすべきか、というご相談をいただく機会が非常に多いです。

 是非、既にカーボンニュートラルに向け歩みを進めている競合他社に後れをとらないためにも、最新動向にアンテナを張り巡らせるとともに、PDCAサイクルを回していっていただきたいと考えています。

 以上、改正省エネ法の改正ポイントから、今後事業者に求められるGXマネジメントについて解説させていただきました。足元では、改正省エネ法の改正ポイントを踏まえた対応が必要となりますが、これを契機としてGXマネジメントを実装し、是非カーボンニュートラル推進に役立ててもらえると幸いです。


著者プロフィール

アビームコンサルティング株式会社 産業インフラビジネスユニット マネージャー 北村健一


大手都市ガス会社のあと、アビームコンサルティングに移籍。エネルギー・環境に関する知識を生かし、エネルギーマネジメント・GXマネジメントを専門とし、排出量算定やGX戦略策定など、様々な業界に対するコンサルティングを多数経験。メール:kenkitamura@abeam.com



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