非化石価値の取引において、小売事業者に公平な調達機会が確保されることは、制度の大前提である。
しかしながら、現実には非化石電源の大半を旧一般電気事業者等が保有しており、仮にこれらの事業者が目標値以上の非化石価値を保有し続けた場合、その他の小売電気事業者は非化石価値へのアクセス環境が阻害され、目標を達成する手段が限定されてしまう。
このため、特例措置として小売電気事業者の非化石電源比率に応じて「化石電源グランドファザリング(GF)」を設定したうえで、事業者が社内・グループ内の発電事業者から、社内取引・相対取引により入手することが認められる非化石証書量は、以下の範囲が上限とされた(激変緩和量を除く)。
この範囲を上回る非化石証書は、市場またはグループ外の発電事業者等から調達する必要があるため、結果的に、すべての小売事業者が同じ比率の証書を外部から購入することを担保している。
なお、第2フェーズ以降は化石電源グランドファザリングが漸減していくことに伴い、各社の内部取引許容量も減少していくことになる。
相対取引について不当な価格設定の有無を確認するため、監視等委員会は以下の1〜3の価格水準を比較するとともに、旧一電各社の社内・グループ内取引の取引実態を確認した。
2022年度の前半(第1回、第2回オークション)では、相対取引価格は市場価格(最低価格:0.6円/kWh)と同等、もしくは若干下回る価格帯を形成していたものの、後半(第3回、第4回オークション)には非FIT非化石証書の需要が供給を大きく上回り、証書の需給逼迫が生じたため、相対取引では、第3回オークション以降の市場価格(上限価格:1.3円/kWh)や、それを上回る価格での取引が成立していた。
監視等委員会は、これは不当な価格設定には当たらない、と報告している。
監視対象事業者の1社は、市場入札価格よりも高い価格で内部取引(一部)を行っていたが、市場価格を指標として内部取引価格を設定したものであり、これは内部補助の観点からも不当な価格設定とは言えない、と判断された。
なお5社は、内部取引について、そもそも非化石価値部分の価格設定が行われていないことが報告された。これは、従来からの社内・グループ内取引において、発電と小売間で電気と非化石価値相当分の価格が明示されずセット販売されている状態である。
これは、証書価格だけでなく、厳格な内外無差別性が求められる電力卸取引価格についても、差異を生じているとの疑念を持たれるおそれがある。
前掲の表1のとおり、監視対象事業者のうち2社は、そもそもグループ外との相対取引実績が無い。(他の1社は、社内・グループ内取引に該当するものが無い)
また、5社は先述のとおり、内部取引では非化石価値部分の価格設定が行われていない。残る2社については、外部取引と内部取引の価格水準に大きな乖離は生じていないことが確認された。
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