ソーラーシェアリングの最新統計、導入数や営農の状況・トラブルの傾向は?ソーラーシェアリング入門(63)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリングについて解説する本連載。今回は農林水産省が公開した、営農型太陽光発電の最新統計の情報を紹介します。

» 2023年11月07日 07時00分 公開

 毎年夏頃に公開されてきた農林水産省による営農型太陽光発電の最新統計が、やっと公開されました。今回は令和3年度末(2022年3月末)時点のデータになりますが、前年度からどんな変化があったのかを速報的に見ていきます。

一時転用許可件数は引き続き増加傾向

 まず、営農型太陽光発電の一時転用許可の新規許可件数から見ていきましょう。累計許可件数は4349件となり、概ね予想通りの件数になりました。なお、平成30年度〜令和2年度までの許可件数もそれぞれ増えており、令和2年度末時点の新規許可件数は、従来の3474件から3498件に上方修正されています。

農地区分ごとの許可件数の推移 出典:農林水産省

 下部農地の面積の累計も1000haを超え、太陽光パネルの合計出力も1GWdcを超えたとみられます。また、下部農地の面積合計を新規許可件数で割ってみると、令和2年度の1658.8m2に対して令和3年度は1748.5m2となり、1案件当たりの農地面積が大きくなっていることも分かります。

営農型太陽光発電に活用される農地区分

 農畜分別の許可件数を見ると、農用地区域内農地と第1種農地の比率が合計95%となっており、前年度から変化はありません。荒廃農地を再生した事例も、FIT制度における特定営農型太陽光発電の影響が出てくるかと思っていましたが、ほぼ横ばいの39件となっています。

農地区分別の許可件数 出典:農林水産省

設備の設置者と営農者の状況

 こちらは前年度から大きな変化が見られ、年度ごとの数字を比較すると「発電事業者(県外)」の割合が大きく増加し過去最高となりました。発電事業者が営農型太陽光発電設備を設置するという傾向は変わらないものの、昨今の再エネ電源としての営農型太陽光発電に対する注目が集まる中で、県外事業者による発電設備設置の傾向が強まりつつあることが伺えます。

発電設備の設置者と営農者の状況 出典:農林水産省

下部農地の営農者の区分

 10年以内の一時転用許可を取得する要件の一つである、下部農地の営農者については、前年度と同水準の割合で担い手が営農者となっている事例が多いことが分かります。累計で見ても、営農者が担い手である割合は令和2年度の29%から令和3年度には32%と増加してきています。引き続き、10年以内の一時転用許可の要件に担い手を加えたことによる政策誘導の効果が出ていると言えます。

営農者の区分に関する統計データ 出典:農林水産省
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