前回の記事でも取り上げた「営農に支障のある割合」ですが、支障のある事例数は大きく増加しました。ただ、これまで公開されていた年度単位のデータが欠落しているため、これがどの段階で起きているのかは不明です。
ちなみに昨年公開されたデータでは、営農への支障が発生している件数の割合が、一時転用許可を受けた年次が古い事例において増加している傾向が見受けられました。営農への支障の内容を見ると、単収減少が72%で令和2年度の71%から比率的には大きく変わっていません。また、令和2年度のデータについては単収減少(営農者に起因)とされた事例の5割超で、地域の平均単収の0〜20%程度しか収穫量がないという情報もありましたが、今回のデータにはそうした補足は今のところありません。
毎年注目を集める栽培作物のデータは、最近の傾向を裏付けるものになっています。最も伸びが大きいのは観賞用作物で、対前年度比で293件の増加となっています。また、今回から「さかき・しきみ」が個別に記載されるようになりました。他にもきのこ類が95件の増加となり、いずれも前年度より全体での構成比率を伸ばしています。
野菜等の中で「特徴的な作物」も111件増えています。令和3年度の新規許可件数のうち、こうした高遮光率環境でも栽培可能とされる作物で、特にこれまで営農型太陽光発電で選ばれてきたものが、その過半数を占めている状況です。
最後に、10年以内の一時転用許可の要件を満たす事例のデータです。比率としては全体の43%となり前年度の42%とほぼ同水準、令和3年度の単年度で見ても48%とこちらも同水準になっています。今後、特定営農型太陽光発電としてFITの事業計画認定を受けた事業が許可を得ていく中で、この比率がどう変化していくのかは注目されます。
まずは新たに公開された統計情報について速報的に見てきました。引き続き営農型太陽光発電の新規許可件数は増加傾向にあること、一方で営農に支障のある事例も増加しつつあり、作物選定についても従来の傾向が続いていることが見受けられます。
これ以降は、特定営農型太陽光発電として事業化されていくものがどの程度出てくるか、また太陽光発電におけるFIT制度の終息とNon-FITでの営農型太陽光発電事例の増加によってどのような変化が生まれてくるのかに、引き続き注目してきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.