旧一電の「グロス・ビディング」休止、スポット市場に影響は出ているのか?エネルギー管理(2/3 ページ)

» 2023年11月10日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

グロス・ビディングが需給曲線にもたらす変化

 グロス・ビディングは旧一電各社の自社需要分の一部を市場経由で取引するものであり、基本的には安値(0.01円/kWh)で売り入札を行うと同時に、同量を高値(999円/kWh等)で買い入札を行うことで、買戻しを行っていた。

 このため、グロス・ビディングを休止すると、安値の売り札が一定量スポット市場から無くなると同時に、高値の買い札が同じ量、市場から無くなることが想定され、見かけ上の総取引量は減少することとなる。

 ただし、これは市場での需要曲線と供給曲線を等しく左側にシフトさせるため、実質的な需給バランスや約定価格には影響を与えないと考えられる。

 なお、グロス・ビディングの導入時には、これとは逆方向(右側へのシフト)が起こり、このときも、実質的な需給バランスや約定価格には影響を与えなかったと考えられる。

図4.GBの休止が需給曲線にもたらす変化 出典:制度設計専門会合

スポット市場における個社の売買入札量の変化

 電力・ガス取引監視等委員会では、これまで継続的に、グロス・ビディング等の自主的取組をモニタリングしてきており、2023年6月時点での旧一電各社の販売電力量に対するグロス・ビディング売り入札量の割合は、一部事業者を除き概ね横ばいで推移していることが報告されてきた。

図5.旧一電各社月間販売電力量に対するGB売り入札割合 出典:制度設計専門会合

 今回改めて、グロス・ビディングの休止前後における、事業者別の安値の売り入札量と高値の買い入札量の「変化」を確認したところ、中国電力と北陸電力においては、10月1日の前後において、安値の売り入札量と高値の買い入札量に変化がないことが確認された。

 中国電力では、すでに2021年11月以降、「市場価格が極端な高値または安値になると想定される日には、供給力不足または供給力余剰が発生するおそれがある」との理由から、安値売りや高値買いを伴うグロス・ビディングを実施しておらず、これまでの定期的なモニタリング報告においても確認済みである。

 また北陸電力は、2023年3月以降、グロス・ビディングを実施していないことが今回初めて確認された。北陸電力は、「市場価格がグロス・ビディング対象の石炭火力の限界費用よりも低く推移することが多く、グロス・ビディング買戻し分のみ約定し、火力電源の下げ代が不足するおそれがある」ことが、グロス・ビディングを実施していない理由としている。

 つまり、これら2社については、すでにグロス・ビディングはほぼ休止されていた、と言える。

 他方、残る7事業者(北海道電力、東北電力、東電EP、中部ミライズ、関西電力、四国電力、九州電力)においては、10月1日にグロス・ビディングを休止したことに伴い、売り買い双方の入札量が減少しているものの、安値の売り入札量の減少量が、高値の買い入札量の減少量より大きくなっていることが確認された。

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