現在、FITインバランス特例制度①及び③の再エネ予測誤差に対応するため、一般送配電事業者は三次調整力②を調達している。2023年度の三次調整力②の調達費用は、全国合計で196億ΔkW・h、約1,200億円と想定されている。
現在、三次調整力②の必要量は、過去の誤差実績をもとに算出しており、過去2年分の再エネ予測誤差実績データをもとに、出力帯別の3σ相当値を算出しておき(三次②必要量テーブルを作成しておき)、翌日の日射量予測と三次②必要量テーブルから、日々の募集量を決定している。
ここで、電力安定供給の観点からは、再エネ出力の下振れによる供給力不足を避けることが重要であるため、従来から再エネ予測誤差(下振れ)を考慮した調整力必要量を確保してきた。つまり調整力必要量は、再エネ予測の中でも特に、下振れの「大外し」に支配されることとなるため、この「大外し」を低減することが重要な課題であった。
この課題解決のために導入されたのが、アンサンブル予報にもとづく信頼度階級予測である。気象予測では、「アンサンブル(集団)予報」という手法が用いられており、予報のばらつき具合により、気象予測の信頼度(不確実性)を分析することが可能である。
気象会社では、アンサンブル予報に基づく日射量の信頼度階級予測として、信頼度の高い「信頼度A」と信頼度の低い「信頼度B」の2種類を設定し、配信を行う。
一般送配電事業者ではその信頼度階級予測をもとに、過去の再エネ予測誤差実績を2種類に分け、過去の信頼度階級予測に応じて、信頼度Aの日を母集団として作成した三次②必要量テーブルを「Aテーブル」、信頼度Bの日を母集団として作成した三次②必要量テーブルを「Bテーブル」としてあらかじめ作成しておく。そして翌日の信頼度階級予測によって、AとBの必要量テーブルを使い分けている。
一般送配電事業者は2022年7月の中部エリアを先頭として、2023年4月には全エリア(沖縄エリアを除く)で、アンサンブル予報にもとづく信頼度階級予測を用いた三次②必要量の算定手法を導入した。
この結果、2023年度上期の三次②の必要量(全国計)は、信頼度階級予測を活用しない場合と比べ、25%程度低減されていることが確認された。
先述の信頼度階級予測は、アンサンブル予報に基づく日射量予測の信頼度(高い・低い)を表す手法であるのに対して、新たな手法である「信頼区間幅予測」では、アンサンブル予報に基づき発生し得る日射量誤差の大きさを予測するものである。
信頼度階級予測と信頼区間幅予測を比較したところ、日射量予測において信頼区間幅予測の方が、誤差の可能性量が低減されるといった検証結果が示された。
他方、信頼区間幅予測は、日射量そのものとして外れる可能性がある量であるため、この手法を用いる場合、三次②必要量は信頼区間幅から直接算出する必要がある。これは、現在の算出手法(過去の再エネ出力誤差実績をもとに算出する手法)とは、大きく異なるものであるため、今後の三次②必要量の考え方の見直しも念頭に、検討を継続する予定としている。
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