2024年度の再エネ出力制御量の見通しと、出力制御対策の進捗状況エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年03月21日 11時30分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

供給面での出力制御対策の状況

 供給面での再エネ出力制御対策の一つが、新設火力発電の最低出力引下げ(50%→30%)である。既設火力発電設備に対しては技術的困難性に配慮しつつ、同様の出力引下げ、もしくは発電停止の協力を求めている。

 一般送配電事業者と既設の電源III火力(一般送配電事業者からオンラインで調整できない電源)との協議の結果、現時点の最低出力引下げ状況は表8のとおりである。沖縄エリアは、電源III火力に該当する設備はない。

表8.電源III火力の引き下げ状況 出典:系統WG

電源III火力・バイオマス電源の稼働状況の公表

 出力制御対策パッケージの一つとして、情報公開や最低出力基準の順守を促す観点から、再エネ出力制御実施時に稼働している電源III火力・バイオマス電源について、系統WGで公表することとしていた。

 2023年秋以降に出力制御が行われた中国、九州、四国、沖縄エリアにおける、出力制御率が最大であった日に稼働していた設備容量1万kW以上の電源Ⅲ火力・バイオマスの稼働状況は表9のとおりである。

表9.電源Ⅲ火力・バイオマスの稼働状況(2023年度秋以降最大余剰時間帯) 出典:系統WG

 送電端出力50%を超えて稼働していた理由としては、設備トラブルのほか、燃料貯蔵困難、工場の生産調整に基づく稼働、技術的に引き下げ困難、などの理由が報告されている。

系統面の対策状況――九州エリアでは外送電量を拡大へ

 九州エリアの再エネ出力制御を低減するためには、九州と本州間の地域間連系線である関門連系線の運用容量を拡大することが有効である。現在、関門連系線の軽負荷期の運用容量は周波数制約によって決められており、連系線事故時に九州エリアの周波数急上昇を抑制するため、即時に発電を止められる電制電源により連系線運用容量を維持している。

 従来、この電制電源は火力が担ってきたが、今後は再エネを電制電源として運用する技術開発が進められている。九州電力送配電では、費用対効果を考慮し、設備容量の大きい事業者から選定し、最大で50万kW程度の再エネ発電設備に電制装置を設置し、最大で30万kW程度の電制量を確保する予定としている。

表10.電制装置の設置候補発電所(太陽光・風力) 出典:系統WG

 将来的には、九州エリアに限らず、周波数制約が地域間連系線の運用容量決定要因となっているエリアについては、大規模な新設再エネ電源に対して電制装置の設置を求めることを検討する予定としている。

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