需給調整市場における全商品の取り引きがスタートし、いよいよ全面運開となった。しかし、一部調整力の取り引きにおいて、大幅な調達不足が発生するなど、課題が残る状況となっている。
電力の需給調整市場において、2024年度から新たに一次調整力・二次調整力①・二次調整力②の取引が開始され、全面運開を迎えた。これらの調整力は「週間商品」であるため、2024年4月1〜5日を対象とした初回取引が電力需給調整力取引所(EPRX)において、同年3月26日に実施された。
取り引きはシステムトラブルもなく順調に実施されたものの、全エリアで応札不足による大幅な調達不足が発生する結果となった。電力広域的運営推進機関の「需給調整市場検討小委員会」では、初回取引の状況や、このような応札不足が生じる原因などについて検討が行われた。
一次調整力は需給調整市場において最も高速な商品(応動時間:10秒以内、継続時間:5分以上)であり、平常時の時間内変動(極短周期成分)や電源脱落等の緊急時に対応する重要な調整力である。
取引開始の第1週(4月1日〜5日)について、一次調整力の募集量および応札量をエリア別に見たものが図2であり、東京や中部、九州エリアでは、応札量がゼロという結果であった。
ただし、一次調整力は図3のように、交流連系されているエリアにおいて広域調達を行う商品であるため、単一エリア内での応札不足が直ちに問題となるとは限らない。
そこで、全国レベルで一次調整力の取引状況を集計したものが図4であり、初回の週間取引5日間のいずれも、不足率(=不足量/募集量)は80%にも上ることが明らかとなった。
同様に、他の調整力においても不足率が大きく、二次調整力①では不足率が7割程度、二次調整力②では4割程度、三次調整力①では6割程度、複合商品では6割程度と、大きな調達不足が生じている。
もし、このような大きな調達不足のまま実需給を迎えるならば、電力の安定供給に重大な支障をもたらすことが懸念されるため、実際には、追加的な調整力確保の手段が残されている。
週間商品である一次調整力は、実需給の前週火曜日に原則調達するものの、未達(調達不足)となった場合には、相対契約に基づき、前週木曜日に市場外調達を実施することにより、必要量を確保することとしている。
また、容量市場での落札電源(調整力を持つ電源)は、一般送配電事業者と余力活用契約を締結する必要があるため、市場外調達の実施後もなお必要量に対して未達であった場合には、原則前日15時に余力活用契約により対応を行うこととなる。
市場外調達や余力活用契約による電源の追加起動は、あくまでセーフティーネットとしての例外的手段である。
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