需給調整市場において、一次〜三次①はゲートクローズ以降の予測誤差や時間内変動に対応するための調整力であり、各商品(調整力)の必要量が最大となるタイミングは必ずしも同時ではないことから、不等時性を考慮した複合約定ロジックを導入している。
火力や揚水発電等の複数の調整機能を有する電源については、単一商品として応札するか、複合商品として応札するかの選択は任意であるが、複合商品として応札することが期待されている。
なお、複合商品として応札する場合には、供出可能な単一商品のうち、供出量が最も大きい商品の供出量を複合商品の応札量とし、その他の商品は供出可能量全量を内数として入札することとしている。
図10の2つのケースを比較した場合、ケース1とケース2では、電源ラインアップは同じであるものの、より多くのユニットを持ち替える(持ち下げる)ケース2のほうがより多くの調整力を供出可能となり、安定供給上は望ましいと考えられる。
しかしながら、現行ルールでは、約定価格は内数として入札する量は関係がなく、複合入札量(高さ=赤枠で囲まれた面積)と入札単価で決まるため、両者の収入は同額となる。
他方、ケース2ではアセスメント対象電源が増加し、アセスメント許容範囲が狭くなることによりペナルティ発生リスクが増加するため、調整力提供者の視点では、ケース2の応札は合理的ではないと判断され得る。
調整力提供者がケース1の方法で応札するならば、結果として、三次①は100と同じ量であるものの、一次・二次①②の供出量は減少することとなる。
ヒアリングでは、応札不足の原因となり得るその他の意見が複数寄せられたが、本稿では省略する。
一次・二次①②の取引は開始されたばかりであり、今後も市場動向を注視する必要があるが、調整力提供者の意見が妥当であるならば、応札不足は今後も継続すると懸念される。
市場外調達や余力活用契約といったセーフティーネットにより、安定供給は維持可能としても、全国での不足率が80%、エリアによっては100%不足といった状況は、市場として機能していないとの指摘もある。
調整力提供者の経済的インセンティブを高めることにより、応札量を増やすことも一つの方法であるが、これは需要家負担を増加させることとなる。
なお米国PJMでは、日本の一次調整力に相当する「Frequency Response」を市場調達ではなく、電源に強制供出させる制度としている。
仮に今後、日本の需給調整市場が適切に機能しないならば、費用便益評価の観点から、調整力商品によっては供出を義務付けるなど、別の確保手段についても検討が必要になると考えられる。
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