急増する「電力先物取引」、先進企業の活用状況と今後の課題エネルギー管理(1/4 ページ)

電力調達を行う事業者にとって、重要なリスクマネジメントの手段となっている「電力先物取引」。「電力先物の活性化に向けた検討会」では、各社の先物取引の活用状況や市場活性化に向けた提言などが報告された。

» 2024年03月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力の小売や卸供給・発電等の事業に関わる事業者にとって、電力先物取引の活用は、重要なリスクマネジメント手段の一つである。

 日本の電力先物OTC(店頭取引)のクリアリングサービスを行っているEEXでは、2023年の取引高は約183億kWhと急増している。JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場における2023年(暦年)の約定総量は約2,859億kWhであるので、EEXの取引量はこの約6.4%に相当する規模となっている。

図1.EEXによる日本の電力取引の推移 出典:EEX東京

 経済産業省は、2023年11月に設置した「電力先物の活性化に向けた検討会」において、電力先物の現状整理及び活性化に向けた検討を進めている。その第2回会合及び第3回会合では、複数の先進的事業者に対するヒアリングが行われ、各社の電力先物の活用状況や市場活性化に向けた提言などが報告された。

JERA パワートレーディングによる電力先物取引

 JERA パワートレーディング(JERAPT)は、JERAの100%子会社で、同グループの発電・燃料資産をテコに国内での電力トレーディング事業を担っている。電力先物のEEX/TOCOM、OTC等の各市場に対して全方位的にアクセスしており、結果として、流動性の高いEEXによる約定が多い傾向となっている。

図2.JERAPTから見た各市場の特徴 出典:JERA パワートレーディング

 JERAPTは、先物市場は信用リスクの回避など、多岐に渡る便益を提供していると認識しており、その活性化は市場の透明性を高めると期待している。

 JERAPTでは、実際のトレーディングを行うフロントオフィスと、リスク管理を担うミドルオフィスや財務会計を担うバックオフィスを別組織化することで、組織ガバナンスを強固なものとしている。ミドルオフィスでは、「証拠金枠」「与信枠」等の上限設定などのリスクポリシーを制定するほか、トレーディングにより生ずる「収支」「市場リスク」等を日次・月次のレポーティングにより管理している。また、リスクポリシーの順守状況は同社のリスク委員会等に定例報告している。

図3.JERAPT ミドルオフィスの役割とリスク管理 出典:JERAPT
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.