急増する「電力先物取引」、先進企業の活用状況と今後の課題エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年03月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

関電エネルギーソリューションによる電力先物の活用

 関西電力100%子会社の関電エネルギーソリューションは、販売量ランキング10位の大手新電力である。同社は小売販売だけではなく、相対契約による卸電力販売や卸電力市場へも販売を行っている。なお同社では、実需給の範囲内でリスクヘッジを目的に取引を行うことを社内規程に定めており、投機性を排除している。

 同社では、燃料費調整制度(燃調)によるリスクヘッジを基礎として、自社電源構成に合わせた燃調で契約を行い、年度計画において小売燃調の電源構成を維持できるよう、電源調達量や小売販売及び卸販売(年間もの)の電力量を調整している。

図6.月間取引によるリスクヘッジ 出典:関電エネルギーソリューション

 これにより、年間で見れば、JEPXスポット価格や燃料費の変動分を料金回収することが可能となる。しかしながら、これはあくまで年間の電源構成であるため、電源の定期点検等により、月間のJEPX調達量にはバラつきが発生し、この差分が、JEPX市場価格変動の影響を受けることになる。

 このため、電源停止が少ない月は短期相対卸や電力先物、先渡市場での販売を行い、電源停止が多い月は逆にこれらの調達を行い、小売燃調でのJEPX調達量に合わせるよう調整を行っている。現時点、これらヘッジ取引のうち、現物取引(短期相対卸)が8割、電力先物が2割弱を占めている。

 現在、関電エネルギーソリューションでは、実需給の約6カ月前からのリスクヘッジプロセスを開始している。今後、ヘッジ商品の流動性が高まるならば、より早い段階からヘッジを開始することを検討している。

図7.関電エネルギーソリューションのリスクヘッジプロセス 出典:関電エネルギーソリューション

 また現在、同社の電力先物取引では予定取引の確実性が不十分との判断により、ヘッジ会計が適用できず、時価会計による収支に影響が生じているため、電力先物取引へのヘッジ会計適用に向けた制度上の支援を要望している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.