需給調整市場の約定不足と価格高騰の問題――緊急対策は道半ばの状況に第93回「制度検討作業部会」/第97回「制度設計専門会合」(2/4 ページ)

» 2024年06月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

前日調達募集量のさらなる削減策

 需給調整市場における募集量と応札量の大幅な不均衡を解消し、競争を活性化するためには、応札量を増やす取組と募集量を減らす取組の双方が必要であり、迅速性が求められる。

 応札量の増加策としては、応札要件緩和等の誘導的手法や、応札義務化等の規制的手法が考えられるが、いずれも検討には時間を要すると予想される。

表3.需給調整市場の課題解決策の効果と懸念点 出典:制度検討作業部会

 現在の危機的状況における止血策としては、即効性の高い対策が求められるため、前日調達募集量のさらなる削減策が検討された。

 具体的には、週間・前日断面で算定される募集量に対して⼀定の割合(募集量削減係数)を乗じることで募集量を圧縮する。募集量削減係数は、直近約1ヶ月における全エリア・ブロック別での調達率平均を用いる。例えば5月のブロック1の全エリア平均調達率が70%であった場合、6月のAエリア当初募集量50に70%を乗じて35を募集することとする。

 この募集量削減は、6月1日受渡し分以降、速やかに開始する。なお、募集量削減により属地エリアで約定しなくなった高単価の電源等は、未達が発生している他エリアに流れて約定することにより、結果的に他エリアにおける調達費用の増加を招く可能性があることに留意が必要である。

需給調整市場への応札電源

 需給調整市場へどのような電源種が応札されているのか、2023年度と2024年4月を比較したものが、図5である。2024年度から、⼀次・二次①・二次②の取引が開始され、募集量自体が増加していることに留意願いたい。

 火力電源については、週間市場・前日市場のいずれにおいても2024年の応札量が増加している。これは、2023年度まで実施されていた調整力公募によって「電源I」として契約されていた電源が、公募廃止(沖縄を除く)に伴いリリースされたことが一因と考えられる(※2023年度の火力による電源I確保量は426万kW)。

 ただし、認可出力に対する応札量比率及びその増減率は、火力事業者によって大きく異なることが確認されている。

図5.2023年度(月間平均値)と2024年4月の応札量 出典:制度設計専門会合

 他方、水力電源(揚水含む)については、調整力公募(電源I)廃止という背景は同じながら、前日市場への応札量は大きく減少している(※2023年度の水力による電源I確保量は864万kW)。

 水力の応札量を時間帯別に見ると、2023年度までは日中時間帯に多くの調整力を供出していたが、本年4月以降、日中時間帯では大きく減少し、夜間時間帯の応札量は増加傾向となっている。

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