需給調整市場の約定不足と価格高騰の問題――緊急対策は道半ばの状況に第93回「制度検討作業部会」/第97回「制度設計専門会合」(1/4 ページ)

全商品の取り引きがスタートするも、多くの商品・エリアにおいて約定量不足などが発生し、応急対策が行われている需給調整市場。政府の複数の委員会で、今後のさらなる対策についての検討が行われた。

» 2024年06月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2024年4月から需給調整市場の全商品の取り引きが開始されたが、大半の商品・大半のエリアにおいて、大幅な約定量不足や約定価格の高騰が生じており、一般送配電事業者の費用負担も急増している。

 このため一般送配電事業者9社は、制度検討作業部会の検討を踏まえ、緊急避難的な対策として、4月30日取引(5月1日受渡分)から、二次調整力②・三次調整力①の前日追加調達を一時的に中断している。

図1.需給調整市場 約定不足・価格高騰への対応策 出典:制度検討作業部会

 資源エネルギー庁の「制度検討作業部会」第93回会合や電力・ガス取引監視等委員会の「制度設計専門会合」第97回会合では、応急対策実施後の需給調整市場の現状が報告されるとともに、今後のさらなる対策について検討が行われた。

二次②・三次①の追加調達一時中断の効果

 需給調整市場では、調整力(週間商品)の効率的な調達策として、週間断面での調達量を必要量の3σ相当から1σ相当に減らした上で、前日時点で不足量を追加調達する方法を採用している。具体的には、週間商品の二次調整力②・三次調整力①については、三次調整⼒②で代替が可能と判断し、前日市場では、二次②・三次①の不足量を元々の三次②の必要量に加算して調達する運用を行っていた。

図2.二次②・三次①不足量を三次②で加算調達するイメージ 出典:制度検討作業部会

 需給調整市場の約定量不足や価格の高騰に速やかに対処するため、5月1日以降、二次②・三次①の前日追加調達を一時的に中断したことにより、全国(9エリア合計)での約定量・募集量・約定率は図3のように大きく変化した。

 1日あたりの三次②(前日商品)募集量は、4月と比べ5月は約6割減少(46,710MW/日→19,702MW/日)したことにより、三次②の約定率は一定の改善がみられる(4月:34.3%→5月:48.9%)。約定率を時間帯別に見ると、夜間帯では平均約定率が87.9%と高いものの、昼間帯では平均約定率は47.0%に留まる。

図3.二次②・三次①追加調達一時中断の効果 出典:制度検討作業部会

 またエリア別に見ると、4月時点で未達率が高かった北海道・東京・中部などにおいて、前日調達の募集量が顕著に減少している。

図4.三次②(前日)募集量と約定量の変化 出典:制度設計専門会合

 前日商品(三次②)追加調達⼀時中断の効果を費用面で見ると、5月(20日までの実績)は4月と比べると抑制されたものの、2023年度と比べると依然として高い費用負担となっている。週間商品(一次〜三次①)は上限価格が設定されているのに対して、三次②には上限価格は設定されておらず、約定価格の高騰が今も続いていることが一因と考えられる。

表1.前日商品(三次②)の調達費用推移 出典:制度検討作業部会

 前日商品(三次②)調達費用の増減をエリア別に見ると、東京や北海道では、わずか1カ月で2023年度総額のそれぞれ91%、67%に相当する費用となっており、危機的な水準と言える。高単価な火⼒・蓄電池・DRリソースは、約定量は少量ながら調達費用を押し上げる要因となったと考えられる。

表2.現時点(2024年4月)における調達費用総額 出典:制度検討作業部会を基に筆者作成
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