低炭素水素の普及を促す新施策、「価格差に着目した支援」の詳細設計第14回「水素・アンモニア政策小委員会」等合同会議(1/4 ページ)

低炭素な水素の普及に向けた施策として、国は一定の基準を満たした事業を支援する制度の検討を進めている。各事業者がプロジェクトコストを回収できる水素の基準価格と、実際の供給コストの「価格差」分を支援する方針だ。第14回「水素・アンモニア政策小委員会」ではこの新制度の詳細設計について検討が行われた。

» 2024年06月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルに向けて、電化が難しい分野においても脱炭素化を進めるため、水素の活用は重要と考えられている。2024年5月に成立した水素社会推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律)では、「価格差に着目した支援」や規制の特例措置が講じられている。

 資源エネルギー庁の「水素・アンモニア政策小委員会」等の合同会議では、同法の本年夏頃の施行に向けて、「価格差に着目した支援」の詳細設計など、政省令等のより具体的な検討が行われた。

「低炭素水素等」の要件

 「水素社会推進法」では、低炭素水素等の活用を促進することとしており、「低炭素水素等」とは、水素及びその化合物(アンモニア、合成メタン、合成燃料)のうち、以下の要件に該当するものと定義されている。

  1. その製造に伴って排出されるCO2の量が一定の値以下
  2. CO2の排出量の算定に関する国際的な決定に照らしてその利用が我が国の排出削減に寄与する

 要件1「炭素集約度の基準値」については、低炭素水素等の種類によって製造プロセスやCO2排出源も異なるため、表1のように、それぞれの性質に応じた要件を設定することとした。

表1.低炭素水素等 炭素集約度の基準値 出典:水素・アンモニア政策小委員会

 燃焼時点でCO2を排出しない水素・アンモニアについては、CO2排出量の算定範囲(バウンダリ)を国際的な基準と同様に、“Well to Production Gate”(原料生産から水素等製造装置の出口まで)として、グレー水素から約7割削減、グレーアンモニアから約7割削減に相当する排出量を基準値とする。

図1.グレー水素(天然ガスSMR)と比較した低炭素水素の基準値 出典:水素バリューチェーン推進協議会

 また、燃焼時にCO2を排出する水素化合物である合成燃料・合成メタンは、ISO 14067に基づき、算定範囲を“Well to Consumer”(原料調達から消費まで)のサプライチェーン全体として、水素製造部分については低炭素水素の基準値(グレー水素から約7割削減)を維持した基準値とする。

図2.合成メタン(e-methane)炭素集約度の比較 出典:CCR研究会

 なお、燃焼時にCO2を排出する合成燃料・合成メタンは、パリ協定に照らして、CO2排出二重計上を回避して、我が国における排出量の削減と認められることを低炭素水素等の要件とする。具体的には表2のI及びIIを満たすことを要件とする。

表2.我が国の排出削減に寄与する低炭素水素等の要件 出典:水素・アンモニア政策小委員会
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