生成AIブームでデータセンターが急増、局地的な電力需要増への対応策は?「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会報告書」(1/3 ページ)

生成AIブームなど影響によるデータセンターの急増が、日本の電力需要を引き上げるとみられている。今後、EVなどの普及も見込まれる中で、こうした局地的な電力の需要増加にインフラ面ではどう対応すべきか。「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」がその対応策に関する報告書を取りまとめた。

» 2024年06月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 日本の電力需要は過去20年近く頭打ち・減少傾向であったが、データセンター等の新設により再び増加傾向となっており、将来的には電気自動車(EV)への充電需要や産業部門等の電化による大きな需要増加も見込まれている。データセンター等による新たな電力需要は局地的に増加することが特徴であるが、これに対応する送配電ネットワークの増強工事には長い年数を要する。

 このため電力・ガス取引監視等委員会は、「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」を設置し、需要側及び送配電ネットワーク双方の観点から、局地的電力需要増加への対応策を検討し、2024年6月に報告書を取りまとめた。

データセンター等による局地的電力需要の増加

 従来、1カ所のデータセンター(DC)における電力需要は数十MWであったところ、近年の生成AI技術の普及により、今後新設されるDCの電力需要は300MW〜1GW(100万kW)に上ると想定されている。

図1.データセンター電力需要増加の変遷 出典:ソフトバンク

 また産業部門・鉄鋼部門の脱炭素化に向けた取組の一つが電炉への転換であり、革新電炉と呼ばれる大型電気炉の場合、数百MWの電力需要となると考えられている。例えば、北海道エリア全体の軽負荷期電力需要が270万kW程度であることを踏まえれば、1つのDC新設や革新電炉への転換が、送配電ネットワークに与える影響の大きさが理解できる。

 大規模DCの建設リードタイムが3〜4年であるのに対して、送配電ネットワークの大規模な増強工期は5〜10年程度を要することが一般的であるため、電力需要の増加を見据え、計画的に先行して系統整備を進める方策が求められている。

図2.系統接続のプロセスと期間 出典:ソフトバンク

送配電事業者側での対策状況

 千葉県印西市では、DC新設に伴う電力契約が増加したことにより、送配電ネットワークの設備容量が逼迫することが見込まれたことから、東京電力パワーグリッドは、50万V送電線に接続する新京葉変電所から千葉印西変電所に至る27.5万Vの地下ケーブル線を新設することとした。この地下ケーブル線は、特殊なシールド工法により通常の半分程度の2年半で約10kmの洞道を建設するなど工期短縮に努めた結果、約5年で完工された。千葉印西変電所の容量は2024年6月の運用開始時には60万kWであるが、東電PGでは将来的に更に増加させることを計画している。

図3.千葉ニュータウンエリアでの電力需要の増加 出典:EMIRA

 長い工期や高額の費用を要する系統増強工事を避け、既存送配電ネットワークを最大限に有効利用するためには、DC等の需要家を系統の空き容量地点へ誘導することも重要となる。このため一部の一般送配電事業者は、「ウェルカムゾーンマップ(早期供給可能エリアマップ)」を作成し、空き容量があり、早期に低コストで系統接続可能な地点情報を公開している。

図4.関西電力送配電 供給可能エリアマップ 出典:関西電力送配電

 なお現在、需要増加による系統増強の判断及び工事の着工は、需要家からの電力契約の申込を受けた後(契約締結後)に行うことが原則である。工事に着手する前の検討段階のプロセスに1年程度を要する場合もあるが、この期間を短縮するため、企業誘致を行う自治体や工業団地等の土地所有者が、一般送配電事業者に対してあらかじめ接続申込を行った上で、企業誘致が実現した後に、申込者を変更する方策などについても、今後検討を行う予定としている。

 なお、需要家Aの新規接続により送配電設備を新設・増設し、3年以内に別の需要家Bが当該設備に接続した場合、既に支払った工事費負担金の一部を需要家Aに返金し、需要家Bも工事費負担金の一部を負担するルールが設けられている。ただしこれは特別高圧に限ったルールであるため、費用負担の公平性の観点から、見直しの必要性について検討を行う予定としている。

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