大規模な系統増強工事を抑制するためには、需要と発電が近接していることが重要である。2024年4月から導入された託送料金の発電側課金では、発電所を需要エリアに誘導することを目的として、需要地に発電所を建設する際には発電側課金を割り引くインセンティブを与えているが、需要側託送料金では、このような立地誘導インセンティブは設けられていない。
一方、英国においては、発電側託送料金と需要側託送料金の双方において、ゾーン別の託送料金が設定されている。
高圧需要(HH(Half Hourly)料金)においては、kW課金において立地地点に応じた課金額(0〜7.6ポンド/kW)が設定され、家庭料金(NHH((Non-Half hourly)料金))においては、kWh料金に課金額(0〜1.07ペンス)が設定されている。この結果、最も課金額が大きい南西部は、課金されない北部と比較して、託送料金に大きな差が設けられている。
送配電ネットワークにおいて一般送配電事業者は、電圧を一定の範囲に収めるよう運用することが求められている。
太陽光発電(PV)が多数接続されている配電系統においては、PVの稼働時には適正電圧の上限近くまで電圧が上昇する一方で、雨天・夕方などPVが稼働していない場合は、配電線に接続する需要が無効電力を消費するため、適正電圧の下限近くまで電圧が低下する。このためPV導入量の増加に伴い、近年、配電線の電圧管理は難しくなる傾向にある。
配電系統で電圧が上昇した場合、一般送配電事業者は配電用変圧器等で電圧を調整し、適正電圧を維持しているが、電圧上昇の原因である「無効電力」は特別高圧系統へ流出し、最終的には基幹系統に集まるため、軽負荷期には基幹系統の電圧上昇も生じている。
中部エリアでは、軽負荷期には基幹系統の電圧が管理値を超過する事態も発生しているため、この対策として、無効電力の吸収源となる直列リアクトルの設置や一部送電線停止(=インピーダンスを増加)などの運用対策も実施している。
また従来から、需要家による無効電力の消費(=電圧低下の原因)を抑えるため、託送供給等約款において、力率割引・割増し制度を運用してきたが、無効電力供給過多であっても割引率は最大のままであるため、需要家の無効電力供給を抑制するインセンティブが働きにくい状況を招いている。
よって今後は、力率割引制度の見直しや、系統状況に合わせて無効電力を供給又は消費することが可能な「無効電力補償装置」を系統に設置することについても検討を行う予定としている。
今後、電力・ガス取引監視等委員会は今回の研究会報告書を踏まえ、資源エネルギー庁等と連携の上、電源と需要リソースが協調した計画的な送配電ネットワーク整備について検討を深めることとしている。
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