再エネ大量導入への対応と電力系統のレジリエンス強化を目的に、地域間連系線の増強に向けた検討が進んでいる。なかでも注目したいのが北海道〜本州間と九州〜中国間の増強だ。このほど政府の委員会において、両エリアにおける海底直流送電線の導入に向けた検討が行われた。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、地域間連系線の整備は、再エネの大量導入と電力のレジリエンス強化につながるものと期待されている。このため、電力広域的運営推進機関は2023年3月に、広域連系系統のマスタープランを策定・公表し、現在その具体的な整備計画の検討を進めている。
電力系統の増強に一定の規律を持たせつつ、社会コスト全体を抑制する観点からは、費用便益評価を行うことが原則となるが、現時点、すべての要素が貨幣価値として考慮できているわけではないことにも留意が必要となる。
広域機関の「広域系統整備委員会」第75回会合では、北海道〜本州間の海底直流送電線(HVDC)や九州〜中国間の関門連系線増強に関する工事費、工期、費用便益評価の試算結果が公表された。なお、今回の試算の前提とする2030年頃の需要・電源は、供給計画の最終年次(10年目)をベースとして、電源等開発動向調査や接続契約申込等の比較的蓋然性の高いポテンシャルを考慮し、表1のように設定されている。
北海道や東北エリアは風況に恵まれ、洋上風力発電の大量導入が見込まれることから、マスタープランにおいては、日本海ルート(北海道〜東北〜東京)で400万kW、太平洋ルートで北海道〜東北200万kW、東北〜東京400万kWの海底直流送電等の複数のシナリオが提示されている。
広域系統整備委員会では、このうち日本海ルート(北海道〜東北〜東京)で2GW(200万kW)の海底直流送電(HVDC)計画について、先行的に検討を進めており、この工事概要・工事費は図1のとおりである。工事には、HVDC海底ケーブル、地中ケーブル、架空線、交直変換所の新設のほか、各エリアの地内系統増強も含まれる。
交直変換装置については、技術開発動向や工事費・工期などを総合的に考慮し、設備構成の基本要件は以下のとおり設定した。
また海底ケーブルは、漁業や大型船舶の錨(いかり)などからの防護が必要であり、正確なケーブル防護区間や防護方法など、今後の詳細な調査が必要となるため、幅を持った試算となっている。交直変換所の詳細仕様も未確定であるため、費用変動が考慮されている。
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