系統強化に向けた「海底直流送電線」、北海道-本州と九州-中国エリアで整備の方向にエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年03月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

費用便益評価の結果(東地域・日本海側HVDC計画)

 以上の前提条件を基に、東地域・日本海側HVDC(2GW)計画の費用便益評価を行ったところ、費用便益(B/C)はケースにより0.63〜1.72程度となることが分かった。評価期間が長い40年の場合、総費用が大きくなるものの、便益も大きくなるため、相対的にB/Cが良い(1を上回る)ケースが多い。

表3.費用便益評価の結果(HVDC:2GW) 出典:広域系統整備委員会

 貨幣価値への換算が困難な便益として、大規模災害等における供給信頼度の向上効果や、既設北本連系線の作業停電期間における送電制約軽減の効果があるが、現時点、これらの定量化は困難であるため、定性的な効果と位置付けられている。

 また広域系統整備委員会では、北海道〜東北〜東京間のHVDCを1GWで増強するケースについても試算を行った。この場合、2GWのケースと比べて送電容量は半分となるものの、工事費は半額とはならないため、2GWのケースと比べてB/Cが低い結果となった。

 東地域・日本海側HVDC(2GW)増強の概算工期は、6〜10年程度が想定される。ただし、今回の計画のような長距離の海底直流送電線工事は前例が無く、海底ケーブル防護の工法・工期等次第では、全体工期が変動することも想定される。

図5.東地域HVDC:2GW増強の概算工期 出典:広域系統整備委員会

北海道エリア HVDC:2GW接続時の系統信頼度への対応

 北海道エリアは相対的に系統規模が小さく、軽負荷期の需要は2.4GW程度、重負荷期の需要は5.4GW程度である。洋上風力発電からの電力を、北海道の既設地内交流系統を経由してHVDCで東北・東京エリアへ2GW送電している状況において、HVDC:2GW全脱落の過酷事故が発生した場合、北海道の系統周波数は急上昇することとなる。ここで無対策であるならば、風力や太陽光といったインバーター電源のPCSが停止し、大規模な再エネ電源脱落により、系統周波数が大幅に低下することなどが懸念されている。

表4.HVDC脱落事故シミュレーション結果 出典:北海道電力ネットワーク

 この問題に対する対策の一つが、再エネ電源(特別高圧)の不要停止を防止するための、PCSの動作ロックである。この他、再エネ安定運転維持のためのFRT要件の見直しやHVDC送電量の制限などの複数の対策を組み合わせることにより、HVDCで2GWの送電は可能であることが確認された。

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