半導体工場やEV充電設備の新設など、局地的な電力需要の増加にどう対応すべきか?エネルギー管理(1/4 ページ)

半導体工場の新設など、電力消費量の大きな設備が設置されることで発生する局所的な電力需要増にどう対応すべきか――。電力・ガス取引監視等委員会は新たに「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」を設置し、課題の整理や対策に関する検討を開始した。

» 2024年03月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 日本の電力需要は2007年にピークを迎え、2011年の東日本大震災以降は節電や省エネにより減少傾向が続いており、電力広域的運営推進機関が毎年取りまとめる「全国及び供給区域ごとの需要想定」においても、将来(10年後)の全国電力需要は減少の見通しが示されていた。

 このような需要減少の背景の中で、再エネ電源の増加や、災害に対するレジリエンスの強化、送配電設備の老朽化などの課題に計画的に対応するため、新たな託送料金制度「レベニューキャップ制度」が2023年度に導入されたところである。

図1.部門別電力最終消費の推移 出典:局地的電力需要・送配電NWに関する研究会

 ところが近年、データセンターや半導体工場の新設、電気自動車(EV)用充電設備の整備が進むことにより、電力需要の急増が想定されており、これらの電力需要は局地的に非常に大きなものとなることが特徴である。よって、エリア全体を対象としたピークシフトや節電等の従来型の取組だけでなく、今後は、このような局地的需要増加を機動的かつ円滑に受け入れることや、需要サイドのマネジメントの重要性が一層高まると考えられる。

 このため、電力・ガス取引監視等委員会は新たに「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」を設置し、課題の整理や対策に関する検討を開始した。

エリア別・需要区分別 電力需要の想定

 広域機関が2024年1月に公表した電力需要想定によれば、2033年度時点の全国の需要電力量(使用端)は8,345億kWhであり、2024年度比3.6%の増加が想定されている。

 エリア別・需要区分別に見ると、その増減幅はさらに大きく、沖縄では人口増加による家庭用の需要増加、北海道や沖縄では、リゾート開発による業務用の需要増加が大きく見込まれている(※グラフごとに縦軸の数値が異なることに注意)

図2.エリア別・需要区分別 電力需要の想定 出典:広域機関需要想定

 通常の電力需要想定はマクロ的な分析が基礎となるが、「産業用その他」における、北海道、東京、関西、中国、九州の急増は、具体的なデータセンター・半導体工場の新増設に伴う需要増加を個別に加算して需要想定を策定している。

 データセンター・半導体工場の新増設に伴う需要増加(全国合計)は、2033年度時点で+537万kW、需要電力量は+407億kWhと想定されている。なお現時点、EV充電に伴う電力需要については、広域機関の需要想定報告書では、区分や記述が無く、家庭用需要等の内数とされていると考えられる。

図3.データセンター・半導体工場の新増設に伴う最大需要電力 出典:広域機関需要想定
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