半導体工場やEV充電設備の新設など、局地的な電力需要の増加にどう対応すべきか?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年03月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

ウェルカムゾーンマップ(早期供給可能エリアマップ)の公表

 データセンター・半導体工場等の大規模な需要地に新たに送電するためには、既存の系統から送電線を分岐し、新たに鉄塔を建て、土地収用が発生することも想定される。需要家および一般送配電事業者のいずれの観点でも、なるべく早期に低コストで電力供給を開始することが望ましい。

 このため、一部の一般送配電事業者においては、送配電ネットワークのどの地点に空き容量があり、早期に低コストで系統接続可能であるかの情報を示す、ウェルカムゾーンマップ(早期供給可能エリアマップ)を公表している。

 例えば、東京電力パワーグリッドのウェルカムゾーンマップでは、面積や地価、工期等の条件から需要家自身で検索することが可能である。

図7.ウェルカムゾーンマップの検索条件と検索結果 出典:東京電力パワーグリッド

 また関西電力送配電では、数百MW級の大規模供給可能エリアマップや、早期(3〜5年程度)供給可能エリアマップを公開しており、データセンター等は自社の事業計画とマッチした電気の供給可能エリアを抽出することが可能となっている。

図8.関西電力送配電 供給可能エリアマップ 出典:関西電力送配電

EVの電力系統での活用

 EVや蓄電池は、充電時には負荷(需要)となり、放電時には供給力となる2つの側面を持ち、充放電のタイミングを調整することにより、送配電ネットワークのローカルレベルおよび全系レベルで様々な効果が期待される。

表1.EVによる電力系統への貢献 出典:東京電力パワーグリッド

 東京電力パワーグリッドでは、EVの充放電形態・制御方法・制御指令の3つの観点から検討を行い、EVの電力系統での運用方法の確立を目指している。EVリソースの運用において、EV充電タイミングのみをコントロールする「V1G」で十分であるか、放電による自家消費・逆潮流により「V2X(V2G/V2H・V2B)」まで行うかの違いにより、必要となる設備やコスト、その効果が異なることとなる。

図9.EVリソースの充放電形態 出典:東京電力パワーグリッド

 また、EVリソースの制御方法は、電気料金型とインセンティブ型に大別され、平時は多数のリソースを電気料金型で誘導しつつ、緊急時にはインセンティブ型による追加制御を行うことが考えられる。

 海外事例として、ハワイアン電力会社では、点灯帯料金が60セント/kWh、昼間帯料金が20セント/kWhという時間帯別料金メニューを試験的に1万軒で導入済みであり、来年度から全世帯に導入予定である。

 また英国では、2021年にEVスマート充電規制が制定され、国内で販売される家庭用・職場用の普通充電設備はスマート機能を備えることや、ピーク時間帯以外での充電をデフォルトで設定することが義務付けられている。

 英国の電力小売事業者であるオクトパスエナジーは、電気料金が安価な際に必要量を自動で充電するサービスを提供している。

表2.英国のEVスマート充電設備規制 出典:電力中央研究所

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