生成AIブームでデータセンターが急増、局地的な電力需要増への対応策は?「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会報告書」(2/3 ページ)

» 2024年06月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

EV充電需要等の時間シフトによる効果

 日本における電気自動車(EV・PHV)の保有台数は、2022年度末時点で42万台であり、乗用車全体に占める比率は1%に満たない。

 国内におけるEVの1kWhあたり走行距離(いわゆる電費)は6〜7km程度であり、国内乗用車の1日あたりの平均走行距離(平日:20km/日、休日:28km/日)を乗じると、EV1台あたりの電力消費量は3〜4kWh/日程度となる。今後、日本の自動車保有台数の1割がEVになったと仮定すると、消費電力量は2,348万kWh〜3,131万kWh/日と試算されるが、これは我が国の1日あたり平均電力需要(約23.7億kWh:2022年度)の1%程度に過ぎない。

 よって、EVへの充電を、時間的・地理的に分散させることにより、送配電ネットワークに対する影響を避けることが出来ると考えられる。

 例えば、法人が所有する社用EVは、自然体では夕方頃に充電ピークが発生するが、新電力大手のエネットではEVの充電開始時間を制御することにより、EV充電需要ピークを夜間に移動させることに成功している。

図5.法人所有EVの充電時間シフト制御イメージ 出典:エネット

 また、従来の家庭向けオール電化料金プランは夜間が割安であったが、九州電力では、再エネ余剰電力の利用を目的として昼間の電力量料金を割安にした「おひさま昼トクプラン」を、EV等(蓄電池やエコキュートを含む)を保有する家庭向けに開始した。

 この結果、同プラン加入需要家の需要曲線は、夜間ピークから昼間ピークへ移行しており、昼間への移行量(加入者平均)は、1日・1世帯あたり2kWh程度であることが確認された。このような小売料金プランが全国的に普及することにより、再エネ出力制御を低減することが期待される。

図6.おひさま昼トクプラン加入者平均の需要曲線 出典:九州電力

 ただし、小売電気事業者が需要家に対して、このような時間帯別小売料金プランを提供するためには、小売事業者が負担する託送料金も時間帯別となっていることが望ましい。

 一般送配電事業者の託送料金ではすでに時間帯別料金制が導入されており、例えば九州電力送配電の時間帯別kWh料金は表1のように設定されている(kW料金は通常の託送料金と同一)。

表1.九州電力 時間帯別託送料金(kWh料金単価部分) 出典:九州電力送配電

 ただし、時間帯別託送料金の利用率は、低圧電灯において沖縄で1割、九州では9割のように、エリアによって大きく異なることが明らかとなった。通常、一般の需要家は、自分が契約する託送料金プランが何であるかを知らされていないと考えられるため、小売電気事業者を通じた丁寧な説明が求められる。また、太陽光余剰電力の有効活用のためには、一般送配電事業者において、昼間の託送料金を割安とするプランの導入についても検討が求められる。

表2.エリアごとの時間帯別託送料金の割合 出典:局地研報告書

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