盗まれたケーブルは、金属スクラップ(金属くず)として、窃盗犯から金属くず買い取り事業者に転売されることになる。現在、金属くずに関する法規制としては、国の「古物営業法」と地方自治体の「金属くず条例」がある。
ただし、切断された金属ケーブルは通常、「廃製品」とみなされ、「古物」(本来の用法に従って使うもの)に該当しないと考えられるため、古物営業法に基づく相手方(売り手)の確認義務等の対象外とされている。また、不正品の疑いがある場合の警察への申告や、取り引きの記録が行われない場合が多く、届出等を通じた金属くず買い取り業者の実態把握もできていない。このため、窃盗犯からすると、盗品の売却が容易な状態となっており、これが窃盗犯の動機を強化していると考えられる。
これとは別に、全国の17道府県において、いわゆる「金属くず条例」が制定されている。金属くず条例の対象事業者(許可又は届出)は、取引相手方の確認義務や、不正品の疑いがある場合の警察への申告、帳簿等への記載等が義務付けられている。なお、条例制定道府県であっても、その制定が古く罰則が比較的軽いため、悪質な金属くず買い取り業者に対する規制の効果が限定的という課題も指摘されている。
また、条例は当該県内の金属くず買い取り業者のみに規制が及ぶため、他県に持ち込めば、盗品を売却可能な状態であることに変わりはない。
金属盗では、「ボルトクリッパー」や「ケーブルカッター」が犯行用具として多く用いられていることが分かっており、警察庁では、盗品の転売段階での法規制だけでなく、窃盗前の対策として、犯行用具に対する法規制についても検討を行っている。
なお、犯行用具の所持等に対する法規制についてはすでに、「軽犯罪法」や「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」がある。ボルトクリッパー等は軽犯罪法の対象となるが、軽犯罪法の罰則は軽いため抑止効果が限定的であり、効果的な取締りも困難との課題が指摘されている。
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