運輸部門の脱炭素化に向けて、経済産業省は2030年代早期に全新車をバイオ燃料対応とする方針を固めた。本稿ではこの自動車燃料へのバイオエタノールの導入拡大に向けた方針案の概要と、同時に議論されている次世代燃料の環境価値認証・移転制度に関する検討の方向性について紹介する。
日本全体のCO2排出量10億3,688万トン(2022年度)のうち、18.5%を占める運輸部門の脱炭素化は喫緊の課題である。このため、現行の第6次エネルギー基本計画では、2030年までに新車販売で電動車20〜30%、2040年までに新車販売で電動車と合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両で合わせて100%を目指すこととしている。
液体燃料の脱炭素化は、新車だけでなく、市中に8,200万台存在する既販車の速やかな脱炭素化につながり、SS(サービスステーション)等の既存のインフラを活用できるといったメリットがある。
しかしながら、合成燃料(e-fuel)の商用化時期は2030年代前半を目標としており、それまでの間は、もう一つの脱炭素燃料であるバイオ燃料の導入拡大を進めることが求められている。
このため資源エネルギー庁の脱炭素燃料政策小委員会では、自動車用燃料(ガソリン)へのバイオエタノール導入拡大に向けた方針(案)や、次世代燃料の環境価値認証・移転制度に関する検討の方向性が示された。なお、トラックやバス等に用いられる軽油(ディーゼル)のバイオ化は、当面は技術的・経済的ハードルが高いため、今回の小委では扱っていない。
現在のバイオエタノールの多くは、トウモロコシやサトウキビ等の植物に含まれるグルコースなどを発酵させて製造しており、次世代バイオエタノールとしては、木質セルロースなどを原料とする研究開発が進められている。
現行世代のバイオエタノールは既に製造技術が確立しており、その製造コストは合成燃料と比べて安価であるため、世界各国において、ガソリンへのバイオエタノールの混合利用が進められている。
バイオエタノールは、そのまま自動車燃料として使用する形態のほか、ガソリン混合燃料として利用する形態が一般的であり、ガソリンとの混合方式にも、エタノールの直接混合のほか、MTBE、メタノール、ETBEの混合など、世界各国で様々な方式が採用されている。
日本では、ガソリンとの親和性が高く、扱いやすいETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を混合する方式を採用している。
日本では、エネルギー供給構造高度化法に基づく「判断基準」の告示において、石油精製事業者(石油元売り)に対してガソリン代替用途でのバイオエタノールの利用を義務付けている。現在の年間目標量は原油換算50万KL(バイオETBE 194万KL)であり、これは、ガソリン消費量の2%弱に相当する規模である。
なお、バイオマスは燃焼時のCO2排出量はゼロであるが、ライフサイクルGHGの観点から、高度化法では揮発油比で60%以上の削減を求めている。
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