ヒートポンプ給湯器や蓄電池は、DRリソースとして使用可能な機器であるが、その機器本来の用途を損ねることは適切ではない。このため「DR ready勉強会」では、機器ごとに異なる本来用途やDR活用ユースケースに基づき、機器ごとにDR ready要件を検討することとしている。
家庭用蓄電システム(家庭用蓄電池)の本来用途とは、第一に停電時におけるバックアップ電力の確保(レジリエンス機能)であり、第二に平時における経済性向上であると考えられる。
このうちバックアップ電力については、ユーザーごとに求める容量(比率)は異なるものの(0〜100%)、万一の停電に備えるためには、この停電用容量をDRに充てることは適切ではない。なお、平時は停電用容量を0%として、台風接近時等には100%とするなど、同じユーザーであっても状況によりバックアップ率は異なり得る。
よって、家庭用蓄電池によるDRとは、停電用容量以外の部分を用いて、経済性向上が可能な範囲で行うものとなる。
先述のとおり、現在すでに家庭用蓄電池ユーザーの多くは、太陽光発電(PV)を併設した「自家消費優先モード」で利用しており、日中のPV余剰電力を充電し、その電気を朝・夕等の時間帯に放電・自家消費することで、系統電力(小売電気料金)の支払いを節約し、経済性を向上させている。
これは、電力の需給逼迫(ひっぱく)が生じやすい時間帯(朝・夕)には系統需要を減らすこととなるほか、PVの出力制御が生じやすい昼間帯には系統への逆潮量を減らすこととなり、電力需給バランスの最適化に資する活用がなされていると言える。
一般的な家庭用蓄電池を「PV併設・自家消費優先モード」と想定する場合、時間帯や天候によるPV発電量の変動の影響を受けるため、DR活用の在り方について検討する際には、同じく時間帯や天候を考慮する必要がある。
まず図7の晴天の日中には、PV余剰電力の充電により満充電状態となるため、さらなる充電による「上げDR」は出来ないと考えられる。他方、このような昼間やそれ以降の時間帯では、放電による「下げDR」を行える可能性が高い。ただし、逆潮流を行うには家庭用蓄電システムがこの機能を具備する必要がある。
逆に図8の雨天の場合は、PV発電量が少なく蓄電池容量に余裕があるため、一日を通して「上げDR」(充電)が出来る可能性があり、「下げDR」(放電)を行う余力は小さいと考えられる。
ただし、これらはあくまで「出来る/出来ない」の観点での検討であり、経済性が向上するか否かの判断は、DRの報酬が小売電気料金を上回るか否か次第であると考えられる。
(図7・8の順序とは逆になるが)まず図8の雨天時の場合、DR報酬が小売電気料金を上回る場合のみ、「上げDR」(充電)を行うことが経済合理的となる。また通常、雨天時には需給バランスの観点から「上げDR」を行う必要性もとぼしいと考えられる。
次に図7の晴天時の場合、夕方から夜間には、自家消費量を超える範囲であれば、かつ翌日も晴天であれば、たとえDR報酬が0.1円/kWhであっても放電(下げDR)を行うことが経済合理的であると考えられる。ただし翌日が雨天の予報であれば、翌日の自家消費量や系統からの買電量、DR報酬や小売電気料金等を総合的に考慮する必要があると考えられる。
いずれにせよ、家庭用蓄電池によるDRは、ユーザーの経済性向上という目的に合致する範囲で行う限り、蓄電池の(第二の)本来用途を阻害するものではないため、「DRサービサーが、DRを加味した充放電を計画し、機器等に送信する」活用が望ましいと整理された。
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