三菱マテリアル(MMC)とエネコートテクノロジーズがペロブスカイト太陽電池用の成膜用インクを新開発。従来比約1.5倍の発電効率を実現したという。
三菱マテリアル(MMC)とエネコートテクノロジーズは2025年3月24日、ペロブスカイト太陽電池について、従来比約1.5倍の発電効率を実現する塗布タイプ成膜用インクを開発したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池には、積層する材料の違いから「順型構造」と「逆型構造」の2つの構造がある。製造の簡便さや耐久性の理由から「逆型構造」が注目されているが、この構造ではペロブスカイト発電層の上に電子輸送層と呼ばれる膜を、ダメージを与えずに形成する必要がある。
これまでは主に炭素系材料であるフラーレン(C60)を真空プロセスで成膜していたが、商業化に向けてより低コストな材料および新たな成膜方法に関する研究開発が進められている。また電子輸送層用インクにはペロブスカイト層への浸食防止やインクの塗布性を確保し、成膜後の均一性や密着性が求められている。そこでMMCイノベーションセンターは、NEDOのグリーンイノベーション基金事業を受託したエネコートテクノロジーズより委託を受け、製造コストに優れる塗布型のプロセスを採用した電子輸送層形成材料の開発に取り組み、新たな成膜用のインクを開発した。
塗布型のプロセスは製造コストに優れるものの、成膜用インクの溶媒がペロブスカイト発電層にダメージを与えること、またダメージを与えない有機溶媒中ではナノサイズの酸化スズ(SnO2)が凝集してペロブスカイト発電層との密着性が得られないことが課題だった。
一方、今回開発した塗布型の電子輸送層の成膜用インクは、酸化スズナノ粒子の表面を適切な材料で被覆することで有機溶媒中に凝集させることなく分散させることに成功。ペロブスカイト発電層に対して十分に密着した緻密な塗膜を形成することが可能になたっという。これにより、ペロブスカイト発電層から生成される電子を金属電極に効率的に輸送することができ、従来比約1.5倍の16.0%という高い発電効率を実現した。
MMCとエネコートテクノロジーズは引き続き、成膜インクの塗布プロセスの開発も進め、大面積のペロブスカイト太陽電池への早期の実用化を目指す方針だ。
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