軽油引取税(地方税)において「軽油」とは、温度15℃で0.8017超〜0.8762までの比重を有する炭化水素油と定義している。
まずFAMEは炭化水素ではないので、FAME100%燃料は軽油引取税の課税対象外である。ただし、FAMEと通常の軽油を混合する場合、表4のように事情は複雑である。
FAMEと軽油と混合した場合に生じる燃料が地方税法上の軽油の定義に合致するとき、当該燃料の「全量」に軽油引取税が課税されるため、FAME部分も課税対象となる。
なお、船舶の使用者や農業等を営む者など一定の条件を満たす者は、軽油引取税の免税が措置されている。混合燃料が軽油の定義に合致するとき、免税用途の場合、軽油部分は免税であるが、FAME部分は課税対象となる。(表4のA部分)
なお兵庫県は独自に、一定の要件を満たす県内事業者が製造したB5軽油のFAME部分の引き取りに対し、軽油引取税を免除する制度を実施している。
HVOの比重は通常0.8017より小さいため、軽油引取税で定める軽油には該当しない。よって、HVO100%燃料を「自動車の内燃機関の燃料として使用する」以外は軽油引取税の課税対象外である。ただし、自動車の内燃機関の燃料として使用する場合には、HVO100%であっても軽油引取税の課税対象とされている。また、混合燃料が軽油の定義に合致するとき、同じくHVO部分が課税対象となる。
以上のとおり、FAME又はHVOと軽油の混合燃料が地方税法上の軽油の定義に合致するときは、FAME又はHVO部分にも軽油引取税が課税される。他方、揮発油税(国税)におけるガソリンへのバイオエタノール混合については、バイオエタノール部分への揮発油税は免税の措置が設けられている。
資源エネルギー庁では、軽油についても脱炭素化を促進するため、FAME及びHVOの課税の在り方について検討を行う予定としている。
なお、ガソリンに比べ軽油は混合により製造が容易であるため、脱税事件が起きやすいと考えられており、これまで不正軽油への対策のため、混合行為等に対して厳しい事前規制が設けられている。このため、軽油・HVO混合燃料の製造・流通に際しても、事前に都道府県から軽油とHVOの混合に係る製造承認を得ることや、混合後の燃料についても事前に都道府県から譲渡承認を得る必要があり、事実上、その流通が大幅に制限されている。
このため資源エネルギー庁では、脱炭素燃料としてのHVOを円滑に流通させるため、軽油引取税の規制・運用についても見直しを検討する予定としている。
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