脱炭素電源への投資促進に向けて始まった「長期脱炭素電源オークション」。その応札促進に向けて、資源エネルギー庁では第3回オークションから上限価格の引上げなどの制度変更を行う方針だ。
脱炭素電源への新規投資を促進するため、2023年度から「長期脱炭素電源オークション」が開始され、第2回入札の約定結果が4月28日に公開されたところである(第2回入札結果の詳細はこちらへ)。
本制度は、脱炭素電源への新規投資を対象とした入札を実施し、落札電源は固定費水準の容量収入を原則20年間得ることにより、長期的な収入の予見可能性を与えることを目的としている。
第7次エネルギー基本計画では、脱炭素電源へのさらなる投資環境を整備するため、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や、オークション上限価格の引上げ等について検討を行うことが記された。
これを踏まえ、資源エネルギー庁の制度検討作業部会では、長期脱炭素電源オークション第3回入札での応札促進に向けて、制度の大幅な見直しを進めている。
「CCS(CO2回収地下貯留)付火力」は既に長期脱炭素電源オークション制度の対象であるが、2023〜2024年時点ではまだ応札が想定されなかったことや、CCSの固定費・可変費の整理など上限価格を設定することが困難であったため、第1回・第2回オークションでは入札対象外とされた。
現在は、既設火力をCCS付火力に改修することを検討中の事業者も存在するため、既設改修CCS付火力を第3回入札の対象とすることとした。ただし、CCS付LNG等の「新設・リプレース案件」については、まだ応札案件が想定されないため、第3回入札でも対象外としている。
なお、水素・アンモニアでは技術的な課題等を踏まえ、専焼だけでなく「混焼」(水素:10%、アンモニア:20%)から開始することを認めている。既設火力を改修してCCS化する場合、敷地条件によりCO2分離回収設備等のCCS化に必要な設備の設置に制約が生じる場合があるため、最低CO2回収率として「20%」以上を求め、他の火力電源と同様に、2050年に向けた脱炭素化ロードマップの提出及びその実現への取り組みを求めることとする。「CO2回収率」とは、図1の「③÷④(定格出力時ベース)」により算出される。
CCS付火力がCO2を排出しない脱炭素電源として評価されるためには、発電に伴って発生したCO2排出量を実際に貯蔵することが必要である。よって、発電事業者がトレーサビリティ含めて貯蔵に責任を持つことを担保するため、年間のCO2貯蔵率に対してリクワイアメントを課すこととする。「年間CO2貯蔵率」とは、図1の「①÷②(実績ベース)」により算出される。
水素・アンモニアでは、年間最低混焼率70%以上のリクワイアメントを課していることと同様に、CCS付火力では対象kWから生じるCO2発生量のうち年間で70%以上を実際に貯蔵することをリクワイアメントとする。これを下回る場合、ペナルティーとして貯蔵率に応じて容量確保契約金額を1割又は2割の減額を行う。
CCS付火力(既設火力の改修案件)は水素・アンモニアと同様に、最低応札容量は「5万kW」、供給力提供開始期限は「11年」(アセス済みの場合は7年)とする。
また、CCSについて国は本制度の他に、「CCS事業への投資を促すための支援制度」(CCS支援制度)を検討している。このため、CCS支援制度での支援が決定している場合はその支援金額を控除して応札するなど、2つの支援が重複しないよう調整措置を講ずることとする。
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