北海道大学がマグネシウム電池の劣化挙動を解明。電解液に含まれる微量の水分が電池部材の腐食や正極の溶出などを促進することが分かったという。
北海道大学大学院理学研究院の研究グループは2025年5月21日、次世代電池として期待されるマグネシウム電池の劣化挙動について、電解液に含まれる微量の水分が電池部材の腐食や正極の溶出などを促進することを解明したと発表した。水分の混入を厳格に管理すれば、マグネシウム電池の高エネルギー動作が実現できるという。
資源的制約が無い次世代の蓄電池として期待されているマグネシウム電池だが、実用化にはさらなる高エネルギー化が必須とされている。それに向けて、近年開発された弱配位性アニオンを有するマグネシウム塩を用いたエーテル系電解液が注目されている。この電解液はマグネシウム金属負極側の反応が効率よく進行するメリットがある。一方で酸化物正極側の反応に対しては可逆性が悪く、低可逆性を示す原因の解明や、この電解液に適用可能な正極材料の創出などが求められていた。
今回研究グループはマグネシウム電池の正極と電解液の界面で生じる劣化挙動を調べるため、二酸化マンガン正極とエーテル系電解液界面の反応を調査。電解質にはフルオロアルコキシボレートアニオンまたは、フルオロアルコキシアルミネートアニオンからなるマグネシウム塩を用いた。
実験の結果、二酸化マンガン正極に対してマグネシウム挿入脱離反応の影響はわずかで、代わりに多くの副反応が進行。具体的には、正極の集電体や電池部材に用いたステンレスやアルミニウムなどの金属の腐食や、電解液へのマンガン成分溶出、エーテル溶媒や弱配位アニオン電解質の酸化分解が進んだ。こうした副反応は、電解液中に含まれる微量の水分によって促進されることが分かったという。
また、電解液中に存在する水分子は、マグネシウムイオンと優先的に結合し、正極との反応時に分解し、副反応を引き起こしていることが、分光分析と第一原理計算によって明らかになった。しかも、水分量が200ppm程度の電解液であっても、ステンレス部材の腐食反応は進行することが分かった。一方で、低水分量の電解液を用いれば、高電圧動作条件となる4Vで50回以上の充放電が可能になることを確認したとしている。
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