次世代型地熱発電のコスト目標は12〜19円/kWhに 政府支援策の方針も策定へ第2回「次世代型地熱推進官民協議会」(1/3 ページ)

今後の導入ポテンシャルが期待されている「次世代型地熱技術」。第2回「次世代型地熱推進官民協議会」では、こうした次世代型地熱技術発電のコスト目標や、その達成に向けた支援策の方針が検討された。

» 2025年07月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 地熱発電は、天候に左右されず安定的に発電可能な再エネ電源である。第6次エネルギー基本計画において、地熱発電の2030年度導入目標は150万kW・110億kWh(電源構成比1%)、第7次エネルギー基本計画では、2040年度の導入見通しを電源構成比1〜2%程度(150〜300万kW)としているが、2023年度実績では65万kW・34億kWh(0.3%)に留まり、大きなギャップが生じている。

 こうしたギャップを埋めるものとして期待されているのが、77GW以上のポテンシャルがあると想定される「次世代型地熱技術」である。次世代型地熱技術を用いることにより、開発地域の拡大や資源開発リスクの低減、発電コストの低減が可能になると期待される。

図1.日本の次世代型地熱ポテンシャル 出典:資源・燃料分科会

 資源エネルギー庁の「次世代型地熱推進官民協議会」の第2回会合では、次世代型地熱の目指すべき発電コストやロードマップ案が示されるとともに、次世代型地熱による経済波及効果が試算された。

次世代型地熱の世界的動向

 次世代型地熱技術に対して世界的に関心が高まっており、米国では現状3GWの地熱発電容量が次世代型地熱により、2050年までに90GW以上に拡大し得ると推計している。

 従来型の地熱発電では、エネルギー源となる「熱」、エネルギーの媒体となる「水」、エネルギーの貯留/流路となる「亀裂」等の3つの要素が揃うことが必要であったが、水や亀裂等が乏しい地下からもエネルギーを取り出すさまざまな技術の総称として「次世代型」の地熱技術と呼んでいる。主な次世代型技術では天然の熱水が不要であるため、広範囲な地熱資源が活用可能という特長がある。

図2.主な次世代型地熱技術 出典:次世代型地熱推進官民協議会

 次世代型技術の一つである「超臨界地熱」は、大深度に賦存する高温高圧な超臨界流体を用いる技術である。従来型地熱では坑井1本あたり0.3万〜1.0万kWの生産能力が一般的であるのに対して、超臨界地熱では1.5〜5万kW/本の生産能力であり、従来型地熱と比較し出力が大きいことが特長である。

 米国では2025年、ニュージーランドでは2026年から、超高温岩帯の実証掘削を開始する予定である。NEDOによる国内調査(湯沢南部、葛根田、八幡平、九重)では、1地域当たり10〜20万kW程度の30年間の発電可能性が示唆されている。

 「クローズドループ」方式は、亀裂のない高温の地熱層に坑井を掘削し、閉鎖系管内に流体を循環させ、周囲の岩石からの熱伝導で地熱を回収し利用する技術である。これにより、熱水・蒸気がない地域での資源開発が可能となるため、さまざまな地域への展開が期待される。

 カナダのEavor Technologies社はドイツ・バイエルン州において、熱電併給型のクローズドループ方式プラントを建設中であり、2025年中の一部商業運転開始を予定している。Eavor社に出資している中部電力によると、発電コストを今後10円/kWh程度まで低減可能と想定している。また米国では、既存の地熱井を利用した同軸二重管方式による商業実証が実施されており、既設地熱発電所の出力を効率よく増強できる技術として期待されている。

 「ESG(Enhanced Geothermal Systems)」は、岩石を水圧で破砕することで地熱貯留層を人工造成し、水を圧入し蒸気生産させて発電に利用する技術であり、熱水・蒸気がない地域での資源開発が可能となる。シェールオイル/ガスの開発が一般的な米国では、すでに商用化レベルまで開発が進んでおり、米国エネルギー省は2035年までにEGSのコストを45 USD/MWh(約6.5円/kWh)に低減する目標を掲げている。

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