次世代型地熱は、従来型地熱と比べ、開発エリアの拡大や発電出力の増大が期待されるが、従来型地熱と同様に、一定の地質的不確実性を伴うものである。また、従来型地熱とは異なる新たな熱回収技術を使用するため、一定の事業採算性が確保可能となる技術開発の不確実性も大きな課題である。
このため国は、これらの不確実性の低減に向けて、技術開発・実証に対する支援を行うこととした。例えば「超臨界」では、大出力の生産能力と流体性状の確認が、実証で解決すべき主な課題として挙げられている。
現時点、次世代型地熱技術として主なものだけでも「超臨界」、「クローズドループ」、「EGS」の3つの方式があるが、実証着手後は、技術タイプごとの達成状況を踏まえ、フェーズごとにその事業性(ゲートの通過可否)、さらなる支援の要否を判断・スクリーニングし、2030年代早期の実用化を目指すこととしている。
官民協議会において資源エネルギー庁事務局では、次世代型地熱発電の整備・操業コストによる経済波及効果を産業連関分析の手法を用いて試算した。試算の前提条件としては、開発資源量を7.7GW(次世代型地熱ポテンシャルの10%)、設備稼働期間を30年、発電コストを先述の12〜19円/kWhと仮定している。
このとき、建設費は10.2〜16.2兆円、操業費(当初10年間)は3.2〜5.0兆円と推計され(インフレ率等は考慮せず)、これに伴う経済波及効果(生産誘発額ベース)は、約29兆円〜約46兆円という試算結果となった。あくまで暫定的な試算であり、今後のコスト水準やコスト構造等の変化により、経済波及効果は変化するものである。
また同じく、次世代型地熱技術による発電設備容量を7.7GW(ポテンシャルの10%)と仮定し、設備利用率を90.6%と仮定する場合、年間発電電力量は約611億kWhとなる。次世代型地熱の容量が7.7GWとなるのは2040年以降と想定されるが、その時点の総発電電力量を1.2兆kWhと仮定する場合、次世代型地熱のkWhシェアは5%程度になると見込まれる。
ここで次世代型地熱が、同量の火力発電(現在のCO2排出係数0.598 kg-CO2/kWh)を代替する場合、年間CO2削減量は、3,654万ton-CO2と試算される。
官民協議会では10月の次回会合において、2040年・2050年時点の次世代型地熱の目標設備容量を示すとともに、より詳細なロードマップ(政府支援方針)を取りまとめる予定としている。
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