地熱発電・中小水力発電・バイオマス発電の今後はどうなるのか? 「調達価格等算定委員会」の第96〜98回会合で行われた業界団体へのヒヤリングや、2026年度以降の調達価格などの検討状況についてまとめた。
資源エネルギー庁では、毎年、直近のコスト動向や将来の価格目標等を踏まえ、再エネ電源区分ごとにFIT/FIPの新たな調達価格/基準価格を設定している。
「調達価格等算定委員会」の第96〜98回会合では、地熱発電・中小水力発電・バイオマス発電の業界団体等に対してヒアリングを行い、2026年度以降の調達価格・基準価格やFIP制度のみ認められる対象等について、検討が行われた。
地熱発電は、2030年度エネルギーミックスの導入目標を150万kW・110億kWhとしているが、2024年3月末時点のFIT前導入量+FIT/FIP認定量は70万kW、導入量は65万kWに留まっている。
また地熱では、FIP制度のみ認められる地熱発電の対象を「1,000kW以上」としているが、FIPの新規認定は2件・7MW、移行認定はゼロである。
地熱発電の買取価格はFIT開始以来、15,000kW以上:26円/kWh、15,000kW未満:40円/kWhの2区分であったが、地熱資源を有効活用できる適切な規模での事業実施を促す観点から、「フォーミュラ方式」による価格設定を昨年、導入したところである。具体的には、フォーミュラの始点を1,000kW、終点を30,000kWとする直線に沿い、出力に応じて価格が連続的に変化する方式である。
地熱発電の資本費・運転維持費は、規模が大きくなるほど単位コストが低減する傾向があるが、導入件数の大半(76件/全88件)は、1,000kW未満の小規模な設備となっている。また、小規模案件では資本費、運転維持費、設備利用率のいずれも、非常に分散(ばらつき)が大きいことが報告されている(図2)。
小規模設備は既存の坑井を活用した「温泉発電」が中心であり、坑井や設備の維持管理体制や、事業者の経験・ノウハウの水準が様々であることがこの理由と考えられる。今後のコスト低減のためには、知見の蓄積や共有が必要とされている。
大規模案件についても、立地の制約等により資源探査コストや開発コストは高まる方向にあり、昨今の物価上昇や円安の影響により、調査費・建設費とも大幅に上昇している。日本地熱協会では、地熱発電の2012年モデルケース(3万kW)では建設費が258億円であったところ、直近の価格情報を反映させると366億円に上昇すると報告している。
地熱資源の開発には、探査・掘削を実施しても商業的に採取可能な貯留層を発見できないリスクが伴うほか、探査・掘削に対する地域理解醸成の難しさもある。
このような開発リスク・開発コストの低減を図るため、国はJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じて、事業者に対する助成や債務保証を実施するほか、JOGMEC自らが探査・掘削を実施し、事業者に調査結果を提供する「先導的資源量調査」を実施してきた。
ただしこれまでは、地表調査が中心であったため、今後JOGMECでは掘削(噴気試験を含む)の拡充を行う予定としている。これにより、事業者のリスクは低減するため、FIP基準価格の設定に際しては、IRR(内部収益率)想定値を見直すこととする。
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