調達価格等算定委員会では、FIT/FIP認定事業者による定期報告データ等をもとに、発電コストの分析を行っている。ただし、中小水力発電はFIT制度開始前から運転している案件が多数存在するため、資源エネルギー庁では、FIT制度開始前に運転開始した案件に対して別途コストデータの調査を行った結果を加えて分析を行っている。
図5のように、中小水力では設備利用率のばらつきが非常に大きく、小規模(1,000kW未満)案件では想定値より設備利用率が低いものが多く、1,000kW以上では想定値より高いものが多い。なお、水力発電は保安規程等に基づきオーバーホールなど数ヶ月にわたる停止が必要となるが、設備利用率の平均値・中央値は、直近1年間と運転開始以降の全期間ではほぼ同水準であることが報告されている。
また、1,000kW未満の小水力発電では、仕様の標準化がなされていないことに起因するコスト高が課題であったため、低コストで合理的な性能をまとめた標準仕様書を、新エネルギー財団が2023年に作成・公表している。
水力発電事業懇話会からは、中小水力のコスト面での自立化に向けた取組みの一つとして、治水ダムの運用変更による発電電力量増加策が報告されている。
治水ダムでは通常、冬季〜春季には利水容量確保のために貯留量を増やし、夏季以降は洪水調整容量を確保するためにダム水位をあらかじめ低下させている。
このダム運用を少し変更することにより、電力の需給が逼迫しやすい冬季には貯水ペースを落として発電放流量を10%程度増加させるとともに、夏季には無効放流を削減し発電放流量を14%程度増加させることが可能と考えられている。これは資本費、運転維持費ともに20%程度の削減に相当するものである。
なお、治水ダム本来の目的を損ねないためには、精度の高い気象予測が必要となる。
中小水力や地熱発電は、50年以上の長期安定稼働が可能な電源である。現行のFIT/FIP制度では、長期稼働が可能という特性を必ずしも評価できていないため、他の支援措置との役割分担の検討が求められる。またFIT/FIP制度においては、調達期間/交付期間終了後の便益も加味した調達価格・基準価格の算定の在り方について、今後検討を行う予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10