小型の乗用車と比べ、相対的に電動化が困難な大型の商用車(トラックやバス)では、水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)の普及が進められている。また、発電や産業分野と比べ、モビリティ分野はコスト面で相対的に水素への転換が進めやすい。そのため同分野を起点に水素の社会実装を進めることが検討されている。
FCV市場の確立に向けては、需要が集中する地域において先行的に官民の投資を集中させることが重要であるとして、2025年5月に、福島県、東京都・神奈川県、愛知県、兵庫県、福岡県の6都県を中核自治体とする5つの「重点地域」が選定された。
各「重点地域」では、FCV導入に向けた具体的な検討・調整が進められてきたが、以下のような各ステークホルダー間の「三すくみ」状態は、必ずしも現時点、解消されていない。
このため、水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)や日本自動車工業会では、各重点地域を結ぶ「物流の大動脈」(幹線輸送)での水素トラック活用を起爆剤として、モビリティ以外の分野でも水素需要を創出する「水素大動脈構想」を提唱するとともに、500者を超えるJH2Aメンバーも自らユーザーとして需要創出の先頭に立つことを宣言している。
国は、産業界もコミットする「水素大動脈構想」の実現に向け、今後10年程度で、重点地域を中心に大規模水素ステーションの整備など、大型トラック等のFC商用車集中投入支援により、需要の塊を創出し、官民一体で社会実装を加速化するとしている。
水電解装置を用いた国産水素製造のための電源として、まずは再エネの活用が想定されるが、次世代原子力の一つである高温ガス炉では、その高温熱(900℃程度)を利用して準国産水素が製造可能である。高温ガス炉1ユニット(200MWt×5炉心)で、商用規模の水素還元製鉄シャフト炉1基に必要な水素(35万Nm3/h)を供給可能と報告されている。
ただし、次世代革新炉開発ロードマップにおいて、実証炉の運転は2040年代とされており、商用炉については、その原子力規制・許認可プロセスも含め、具体的な運転時期の見通しは示されていない。
また、地下において地質学的反応により生成し、地中に賦存する「天然水素」も国産水素の一つとして注目されている。天然水素の利活用に向けて、まずは開発適地や埋蔵量等の把握、さらに探鉱や採取に関する実効的な手法の確立が不可欠であり、商用化を論じる段階にはないと考えられる。
「技術で勝ってビジネスでも勝つ」ためには、戦略的に水素・アンモニア分野の国際標準化を進めることも重要である。
欧州のクリーン水素アライアンスは、水素サプライチェーン全体を網羅する形で標準化を検討すべき技術項目(約400項目)を抽出し、2023年に「欧州水素標準化ロードマップ」を策定し、今後の行動計画を整理している。また、ドイツ規格協会(DIN)はこれに対応する形で自国の標準化ロードマップを策定している。
日本も本年4月に「分野別標準戦略(水素・アンモニア)」を策定し、日本において対応を進めるべきと考えられる標準化項目(重点領域)を特定するとともに、標準化を推進する体制等を整理した。一例として、水電解装置の性能評価や効率算出方法、安全要件を規定する国際規格の提案など、日本の技術優位性が確保できる取り組みを進めている。
国際標準化の取り組み以外にも、水素・アンモニアのサプライチェーン構築に向けて、複数の需要国や供給国との連携強化など、さらなる国際展開の推進について具体化を進める予定としている。
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