電力を安く使うための基礎知識

これまで大半の企業にとって、電力は買うものだった。しかし今後は余った電力を売れる時代になる。太陽光発電など再生可能エネルギーであれば、いつでも一定の価格で売ることができる。需要がピークになる夏の午後に余剰電力を買い取る新サービスも続々と始まる。

東京電力や関西電力が電気料金を値上げしたことに対抗して、電力会社を使わないでコストを削減する試みが企業や地方自治体の間で広がってきた。電気料金の安い「新電力」と呼ばれる電気事業者へ契約を切り替えるなど、選択肢はいくつかある。

家庭向けの「エネファーム」で注目を集めているガスコージェネレーションシステムは、都市ガスやプロパンガスから電気と熱の両方を作り出せるためにエネルギー効率が高く、通常の電力と比べてコストが割安になる。特に熱を多く使う企業が導入すると効果的だ。

国内で太陽光発電システムを導入する動きが加速している。市場拡大に伴って価格が下がり、2011年度には出荷量が前年比で3割以上も増えた。昼間に使う電力を太陽光発電でカバーすれば、ピークカットとコスト削減を両立させることができる。

東京電力が夏のピークシフトを目的に、時間帯別の料金制度を店舗や家庭向けのサービスにも拡大する。夜間の安い電力を昼間に効率よく使うためには、蓄電システムが欠かせない。ただし価格の高さと寿命の短さが大きな課題として残る。

電力需要が増加する夏を前に、多くの企業で節電対策が急ピッチに進んでいる。毎日の電力使用量をきめ細かく管理しながら抑制するためには、コンピュータを使ったBEMS（ビル向けエネルギー管理システム）が最も有効な手段になる。

企業が電力会社に支払う電気料金は、30分ごとに計測される電力使用量の最大値によって変動する。その最大値を抑えるための装置が「デマンドコントローラ」で、電気料金を引き下げるための有効な手段として注目を集めている。

最近まで多くの企業では、電気代は事業運営に不可欠な“必要経費”との認識が強かった。しかし今後の電力事情を考えると、電気料金は継続的に値上げされていく可能性がある。電力を安く有効に活用するための基本的な問題をシリーズで解説する。