ラウンジ内には、搭乗案内などの放送がいっさい流れていないのも特徴だ。そこは空港特有の喧騒(けんそう)とはかけ離れた、まさに静寂とくつろぎの世界。搭乗便などの情報については担当のコンシェルジュがすべて把握し、時間になれば「そろそろご出発ですので、ご用意を」と声をかけに来てくれる。そして搭乗機へは、メルセデス・ベンツ Sクラスまたはポルシェ カイエンで飛行機のすぐ下まで送迎してくれるので、搭乗ゲートに向かって空港内を延々と歩く必要もない。
こうしたサービスを提供できるのは、世界広しといえども、おそらくルフトハンザだけだろう。なぜか?
利用者が空港に到着してから、目的地へ飛び、到着地の空港を出るまでが“空の旅”である──ルフトハンザがそんなコンセプトのもとで「地上でも空の上と変わらないサービス」を目指してきたのは、前述した通りだ。しかしそれを実現するには、従来の空港のスタイルでは難しい。そう判断したルフトハンザがとった施策が、空港会社への資本の投下だった。
空港運営にも関わるエアラインは他にもあるが、空港にこれだけ大規模な投資をしているケースはルフトハンザ以外に見られない。ルフトハンザは空港の運営に大きな影響力を持つことで、理想とする空港づくりを進め、そうしてついに“究極”ともいえる「ファーストクラス専用ターミナル」のサービスを実現したのである。
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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