JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――最終回「機内Wi-Fiサービス」秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/6 ページ)

» 2014年09月12日 08時00分 公開
[秋本俊二Business Media 誠]

雲の上が快適な「移動オフィス」に

 上空で実際にWi-Fiサービスを使ってみた感想は、「まずまず快適」というところだ。大容量のデータ転送が発生する動画閲覧などはスムーズとは言い難いが、Webやメールを見たり、SNSに書き込んだりといった使い方であれば十分なスピードと感じた。衛星通信を介して提供されるサービスなので、飛行ルートや気象状況により、緯度の高い一部エリア(米国アラスカとカナダの国境エリアなど)では通信が不安定になったり接続が中断する場合もあるという。しかし私が利用した限りでは、切断されることもなかった。

 本当はニューヨークへの出発前に入稿を終えてしまいたかった原稿が終わらず、こうして今機内で仕事を継続している。しかし、ネットで必要な情報にアクセスしたり、メールのやりとりもできるので、何ら不便を感じない。まさに「移動オフィス」だ。とりわけJALが777-300ERに搭載している最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」は、ホテルの一室にいるような感覚で書き物に集中できる。個室型でプライベート感が抜群に高く、周囲の乗客がまったく気にならない。

個室型ブースは、まるでホテルの一室のよう(撮影:倉谷清文)

 今回のニューヨーク行きは、プライベートの休暇も兼ねている。到着後、ある通信社の現地特派員にインタビューを受ける予定になっているが、その日の夜はフリーの時間を確保できたので、お気に入りのジャズクラブに出発前にメールを入れておいた。そして今、機内でWi-Fiをつなげたら、そのジャズクラブの知り合いから「ご予約の日の席が確保できました」という返信メールが! 以前、ニューヨーク取材の際にお世話になった人で、メールには「今晩はぜひ仕事を忘れ、大好きなジャズをごゆっくりお楽しみください。フロアのスタッフに、いっぱいサービスするようにと伝えておきました」と添えられている。

 機内で過ごす時間は、ずいぶん変わったと思う。ニューヨーク線のフライト取材の後にインタビューした、JAL顧客マーケティング本部・商品サービス開発部の江幡考彦氏は「地上ではできても機内ではできない、ということを一つひとつなくしていきたかった」と語った。江幡氏は、機内Wi-Fiサービスの実現に先頭に立って取り組んできた人物だ。

 さて、JAL006便は北アメリカにある五大湖の一つ、スペリオル湖の上空を通過した。ニューヨークまでは、あと1時間余りだ。「到着は定刻どおりと、先ほど機長からアナウンスがあった。約束の時間に空港ロビーで落ち合おう」と、私は通信社の特派員にメールを打ち、PCや仕事の資料を片づけて降りる身支度を始めた。

JAL006便はカナダ上空を飛行し、一路ニューヨークへ(撮影:倉谷清文)

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