子供が不適切な行動をとったときの心理的な対処法が、実は仕事の現場でも役立ちます。不適切な行動で注目を集めたがる「目立ちたがり屋クン」の対処法を紹介しましょう。
アドラー心理学では、子供が不適切な行動をとるときには、4つの目的があるといわれています。
これは子供の行動について言われていることなのですが、最近では、大人にも当てはまるようになってきました。みなさんの会社でも、同じような人を見かけませんか? 今回は、そういった行動で注目を集めたがる人への対処法を紹介します。
まず、不適切な行動をとる子供が、どのような段階を経ていくのかを順に紹介します。上記4つの目的の前段階として、実は褒められたい、という称賛を求める段階があります。
不適切な行動の目的 | 相手役の感情 | 集団内の役割 | 対応策 | |
---|---|---|---|---|
0段階 | 称賛を求める | 褒めたくなる | 優等生/ごますり | 勝ち負けではなく貢献を認める |
第1段階 | 注目を集める | うるさく感じる | いたずら者 | 適切な行動に注目する |
第2段階 | 権力闘争をしかける | 腹が立つ | 暴れん坊/ヒーロー | けんかから手を引く |
第3段階 | 復讐(ふくしゅう)する | 傷つく | ひねくれ者/悪者 | 適切・不適切ともに静観する |
第4段階 | 無気力を誇示する | 絶望する | 落ちこぼれ | 見守って時期を待つ |
昔に比べて、1人っ子が多くなり、少子化が進みました。そんな家庭の子供は、学校に入る前は、親の注目を一身に受けています。自分が要求したら、大抵の親は100%意識を向けてくれるわけです。ところが学校では、何十人もクラスメイトがいるので、先生は自分だけを見てくれるわけではありません。認めてもらおう、褒めてもらおうと思っても、なかなか褒めてもらえない。じゃあ、ちょっといたずらをしてでも気を引こう、ということになることがあります。
同様のことが会社でもあるかもしれません。例えば、懸命に勉強して秘書検定に受かって、がんばって一流企業に入って、「社長は私のこと、見てくれるかな」と期待する。でも、全然気にしてくれない。すると「何よ!」となって、困った行動をとる、というような感じです。
例えば、授業中にペンでカツカツ音を立てる子がいます。これは、ペンで音を立てること自体が好きだったり興味があったりするわけではないんです。それは、先生が「○○クン、音を出すのをやめなさい」と言うからするんです。先生は、うるさいからそこに意識を向けるのですが、その間、授業が中断して、彼を注意することに意識が向いてしまう。つまり、彼はその不適切な行動のおかげで、その時間帯は注目されることになるのです。これが第1段階です。
以前お話したように、心理学と物理学は違います。物理学は悪いところがあったら、そこに注力して直していくのに対して、心理学は注意を向けた部分が増えていきます。音を立てている子に対して「やめなさい」と注意をすればするほど、その子は、「あ、これで注目を得られるんだ」と思って行動が増えていきます。
2人以上のお子さんがいる方は経験しているかもしれません。弟や妹が生まれると、今までおとなしかった子供が、急に赤ちゃん返りしたり、騒いだり、ダダをこねたりすることがあります。それは、下の子ばかり見ないで、私の方も見てくれ、ということなのです。
さて、この不適切な行動には、必ず相手役がいます。第1段階では、相手役の人は、「やっかいだな」「面倒だな」と感じます。そして、その集団の中で、その子供はどちらかというと、“いたずらもの”という感じです。悪気のないいたずらっ子ですね。
会社や職場でも、こんな状況があるかもしれません。たわいないミスをしたり、報告書が変だったりして、「しょうがないな、少し直してあげよう」みたいな感じになることありませんか。ミスする人は、無意識のレベルで、大きな間違いはマズイと分かっているけれど、ちょっとしたミスで相手の気を引こうとしているのかもしれません。この程度なら、まだかわいらしいレベルです。「しょうがないな。俺が見てやらなきゃ」といって上司や先輩が見てくれたり、同僚が助けてくれたりして、問題はまだ小さいかもしれません。
具体的な対処法は、後述しますので、まずは、それぞれの段階の特徴をお伝えしていきましょう。次回は、第2段階に達したら、どんな行動を取るようになるかを説明します。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.