『失敗の本質』――敗戦に学ぶ“日本企業の弱点”藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

大東亜戦争において、日本はなぜ敗れたのか――。日本軍の環境適応能力の低さにあると分析した一冊が『失敗の本質』。経済的敗戦を迎えつつある、日本企業にも十分当てはまる。

» 2009年10月09日 12時03分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 大東亜戦争において、日本はなぜ敗れたのか。その理由が日本軍の環境適応能力の低さにあると分析した一冊が『失敗の本質』。経済的敗戦を迎えつつある、現代の日本企業や政府にも十分当てはまることが分かる。


日本軍はなぜ変化に適応できなかったか

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 日本軍の戦略目的は常にあいまいであり、戦略策定のプロセスは現場積み上げ型であった。特定の戦術を磨くには適しているが、戦略を大きく変更させるには向いていない。とりえる戦略の選択肢は限られていたし、そのために短期決戦を志向せざるを得ず、戦艦大和・武蔵に見られたように一点豪華主義の、長い目線でみればバランスの悪い軍備になっていた。

 組織は属人的であった。アメリカ軍のように統合本部は存在せず、陸軍と海軍はバラバラに動いていた。戦略よりも現場を重視するため、結果よりもプロセスを重視。失敗があっても学習しにくい組織てあったという。

日本軍と日本企業の共通点

 戦略ではなく現場を重視するのは日本企業も同じ。家電、自動車、半導体分野で強みがあったのは、個別製品を少しずつ洗練させることに長けていたからだ。しかし新しいビジネスモデルを創造することは得意としないため、やはり環境の変化にもろい。

 日露戦争の成功体験と、長老体制の定着により日本軍は融通がききにくくなったという。現代日本も、迫る環境変化に対応するために、創造的破壊を起こすことを求められている。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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