グローバル・ナンバーワンが無理なら、ニッチ・ナンバーワンを狙う一生食える「強み」のつくり方(3/3 ページ)

» 2014年05月14日 11時00分 公開
[堀場英雄,Business Media 誠]
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ニッチ・ナンバーワン戦略も無理なら、差別化戦略で勝負する

 ここまでは、ナンバーワン企業、ニッチ・ナンバーワン企業を選ぶというお話をしました。しかし、これらの会社への就職・転職が叶わなかった場合にどうするか?

 残された手は、差別化戦略です。差別化戦略には2つあり、1つは「あえて年収減」、もう1つは「嫌われ仕事」を選ぶことです。

1.「あえて年収減」の道を選ぶ

 1つめの差別化戦略である「あえて年収減」。もうちょっとよい言い方をすると「買ってでも苦労をする」戦略です。年収180万円(月15万円)の選択があなたにはできるでしょうか? もちろん普通に年収を下げるだけでは苦しくなるだけで、意味がありません。

 ここで言いたいのは、リスクを取って、新興国に行ってしまえるかどうかです。前回、「会計(CPA)×英語」のかけ算をがんばってもあまりプラスにならないという話をしましたが、これに「新興国(海外)での生活がまったく苦にならない」という強みをかけ合わせると事情が変わってきます。

 「海外在留邦人数調査統計(平成24年速報版)」(外務省)によると、海外にいる日本人の数は2011年には118万人を超えています。日本人の人口はおよそ1億人なので、「海外に出る」というかけ算ができるなら、現時点では100人に1人の人材になれると言えます。

 今、新興国に出るのはチャンスでもあります。まだまだそういう日本人は多くないので、海外進出人材としての経験や先行者利得を得られる可能性が高いのです。4〜5年がんばったあとに、例えばインドのチームをまとめられるというスキルを身につけ、会計の実務にある程度習熟し、英語も話せるとなれば、得た経験を生かして日本に戻ってきて大幅給与アップも狙えそうです。

 大事なのは、このかけ算は「新興国で生活に困るどころか楽しくやっていける自信がある」人にしか使えないことです。もちろん、実際にやってみないと新興国に合うかどうか分からないので、可能なら大学生の間にインターンを実際に経験してみるのが一番です。できれば最短でも1カ月、もし本当に働くならその国に数年いることになるので、自分に合った国を見つけられるように複数の国に訪問しましょう。

 また、極端な話、給料にはこだわらず、無料でいいから働かせてくれというスタンスで臨みましょう。手弁当で働かせてくださいということであれば、会社のリスクは最小ですから、こういう経験をしたいという希望も聞いてもらいやすいと思います。

 仕事には「かけ算」の観点で意味のあるものとないものがあります。例えば、現地に行って日本のお客さん向けの対応を日本語でしていても仕方ありません。一方で現地の人をまとめるような仕事、現地の人と日々打ち合わせをして進める仕事、現地の人と関わる仕事であれば、その国で働くことについて色々な経験ができます。

 あなたが社会人の場合、1カ月の休みは非現実的ですので、年に1週間単位の休みで複数回訪問するなどして働きたい国にまずあたりをつけましょう。仕事はスカイプなどのツールを活用して、現地の人とできる仕事を小さく始めてみるという方法がよいでしょう。

 またクラウドソーシングでさまざまな仕事を発注できる時代ですので、行ってみたい国の人に何か簡単な仕事を依頼してみるだけでも、その国の人と働く感覚がかなり分かります。

2.「嫌われ仕事」を選ぶ

 「私には新興国で働くなんて無理」という人に別の差別化戦略として提案したいのは、「嫌われ仕事」を選ぶという方法です。みんなが嫌がる仕事をあえて「かけ算」に組み込むのです。そもそも、みんなが嫌がる仕事ですので、なり手が少ないという自然な参入障壁があるために、嫌われ仕事にやりがいを見い出すことができれば、食いっぱぐれない可能性が高いのです。

 では、嫌われ仕事とはどのような仕事でしょうか? 例えば、貸付金督促や商品・サービスへの苦情処理、快適なトイレの維持管理をするトイレ診断士などです。他には看護師もスジがよいと思います。非常に大変な仕事ではありますが、なり手が少ないため働く場所も自由で、一度やめても次の職場が見つかりやすいのです。海外から人材がやってくると言われていますが、自分が病気で苦しいときに日本語がたどたどしい人に看病してほしいでしょうか? ホスピタリティがあれば、日本人優位です。

 最新鋭の医療機器を導入し、高らかに手術の成功率をうたうインドの病院でのメディカル・ツーリズムの例を考えると、むしろ、医師のほうがグローバルな競争にさらされそうな印象を持ちます。麻酔をされている患者は、手術をしているのは日本人か外国人なのかなど、知るよしもないのです。

(つづく)

著者プロフィール:

堀場英雄(ほりば・ひでお)

1978年生まれ。名古屋大学卒業、米国の大学院卒業(原子核工学修士)。

20代はGE、BCGといった一流外資企業でプロとしての成功を一途に目指す。

30代になり大手日系メーカーに勤務しながらも、今まで習得してきた「英語力(米国大学院)×財務スキル(GE)×戦略立案力(BCG)」のかけ算で、オンライン英会話学校バリューイングリッシュを設立。同校の学長を務める。

多忙な留学・社会人生活の中でも、効率的に次々とスキルを習得する力には定評がある。


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