キヤノンのHDビデオカメラ秋モデルは、春モデル“iVIS”「HF20」「HF S10」をそのままグレードアップし、コンパクトな「HF21」および上位モデルの「HF S11」という2製品を用意する。
今回はハイエンド機にあたる「HF S11」をピックアップした。基本的な部分は従来機「HF S10」(レビュー)を踏襲したマイナーチェンジモデルではあるが、もともと完成度の高い製品だっただけに、どう進化をとげたのかが気になるところだ。
・極上性能をコンパクトに凝縮、ハンディカム 「HDR-CX520V/CX500V」
・精細描画とマニュアル操作に注目、Everio「GZ-HM400」
・ライバルを猛追する良バランス機、パナソニック「HDC-TM350」
外観デザインは春モデルの“iVIS”「HF S10」がベース。カメラ本体がレンズ鏡筒そのものといった、光学メーカー製品らしい主張のボディ形状はそのままに、外装色をメタリックから黒基調へと変更したことで、さらに迫力が増した。58ミリと大きなフィルター径をはじめ、カメラとしての押し出しは現行のデジタルビデオカメラでも随一といえる。
カメラとしての基本的な仕様も春モデルをそのまま受け継いでおり、1/2.6型 総画素数859万画素のCMOSセンサーと光学10倍ズームレンズ、映像処理エンジンである「DiGiC DV III」の組み合わせが生み出す、他を圧倒する精細な描写と落ち着いた色再現能力は健在だ。
今回は光学手ブレ補正機構が見直され、ワイド端で従来機種の約14倍という補正効果をもつ「ダイナミックモード」が追加された。春モデルでソニーのライバル機「HDR-XR520V/500V」が実現した強力な補正機構を意識した仕様変更であることは明らかだが、撮影の可能性を広げてくれたことは間違いない。
試しにランニングする男性を並走しながら撮るという無茶をしてみたが、なんとか絵として成立する映像が得られるほどの利き具合を実感できた。急なブレーキなどの操作にも自然に追従し、ダイナミックモードから通常の手ブレ補正モードである「スタンダード」へ切り替える必要は感じなかった。
ただし、テレ端時の補正効果は従来と変わらないので、運動会といったイベントなど、望遠での活用を考えているのなら、期待しすぎないほうがいいだろう。今回は先に紹介したソニー「HDR-CX500V」に、日本ビクターとパナソニックの同クラス機を加えた4モデルで撮り比べを行なっているが、テレ側での手ブレ補正の利き具合はいずれも大きな差は感じられなかった。
もう1点、ライバルの特徴である「暗い場面でのノイズの少なさ」への対策としては、シーンモードに「夜景」を追加するという方法をとった。夜景モードの具体的な内容は取扱説明書にも記載がないので詳しくはわからないが、ハードウェアの改良といった本質的な対策ではなく、電気的な増感を抑えてノイズの発生を少なくする方法がとられているようだ。
もともとフルオートだと被写体をなるべくハッキリ見せようとするためか、暗い場面でも明るくしすぎる傾向にあるので、雰囲気のある夜景を簡単に撮れるモードの追加は確かにありがたい。なお、従来機でもAGCリミットを設定すれば同様の絵は得られるし、AGCリミットの設定はマニュアル設定から呼び出せるが、難しそうなマニュアル設定に頼ることなく、だれでも使いやすい設定項目を用意したということだろう。
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