メインフレーム・オルタナティブは加速するかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年06月08日 11時20分 公開
[松岡功ITmedia]
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技術と体制の力量に対する信頼が加速の鍵に

 「今後、ITの利用形態は、自社のデータセンターでITリソースを効率的に利用するケース、業務プロセスも含めてアウトソーシングするケース、クラウドベンダーからITリソースを調達するケースなど、ITリソースの利用の仕方としてさまざまなサービスの選択肢が出てくるだろう。しかし、どのサービスを利用するにしても、その前にITコストの透明化を図っておかないと、どの部分をどこに出してどうコストメリットを享受していくのかという戦略すら立てられない。その意味でもITコストの透明化は喫緊の課題だ」

 日本HPの松本執行役員は、冒頭で紹介した発言に続けて、ITコストを透明化することの重要性を重ねて強調した。そして、その点については、ほとんどのメインフレームユーザーも切迫した課題として捉えていると、同社では見ている。

 しかし、世界全体ではサーバ市場(金額ベース)に占めるメインフレームの比率は10%程度とみられるものの、日本国内では市場の約26%(IDC Japan調べ)をメインフレームが占めている。冒頭の発言で松本執行役員が語っているように、国内では世界平均の倍以上のメインフレームが今でも利用され続けているのが現状だ。

 日本HPでは、その最大の要因として、日本のメインフレームユーザーの多くが移行に関してリスクを感じており、踏み切りたくても踏み切れない状況にあることが挙げられるとしている。そしてそのリスクとは、オープンプラットフォームに対する信頼性・安定性・セキュリティ面での不安、また独自で業務ソフトの開発を重ねた結果複雑化した、膨大な既存資産の移行に要する多大なコストと工数にあると分析している。

 そこで同社がそうしたリスクを解消すべく市場投入したのが、今回の新ソリューションである。松本執行役員によると、「新ソリューションによって、これまで移行に踏み切れなかったメインフレームユーザーのリスクを最小化しながら、ITコストの透明化や最新技術の導入を実現するための素晴らしい道筋をつくることができたのではないか」という。

 ただ、業界関係者の間ではこんな声も聞かれる。「今、メインフレームが使われているのは、いわゆるスパゲティ状態で塩漬けされた極みのシステムで、移行するにはリスクの高いものばかり。技術的にも体制的にもそのリスクに責任を持てると考えているIT担当者はほどんどいない」

 問題意識は、日本HPの指摘と同じだ。だが、スパゲティ状態で塩漬けされた極みのシステムとなると、リホストの次の段階であるリビルドでの技術と体制の力量が問われる。システムの信頼性もさることながら、その力量に対する信頼が、今後のメインフレーム・オルタナティブの加速では鍵を握りそうだ。その意味でも今回の日本HPの新たな取り組みに注目したい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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