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» 2010年10月12日 18時00分 UPDATE

オルタナティブ・ブロガーの視点:何が本物で、どれが偽物なのか

Oracleの提唱する「クラウド」とsalesforce.comの考える「クラウド」はどちらが“本物”なのか。Oracle OpenWorld 2010とCloudforce 2010 Japan双方に参加したオルタナティブ・ブロガー 谷川耕一氏は「問題はどちらが“本物”かではない」と喝破した。

[谷川耕一,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「むささびの視線」からの転載です。エントリーはこちら。)

 先週は、セールスフォース・ドットコムのイベント「Cloudforce 2010 Japan」に出展&参加していた。ここで話題になっていたのが、米salesforce.com CEOのマーク・ベニオフ氏が発言した「偽物クラウド」の話だった。

 @ITの大津記者も書いているが、先日のサンフランシスコでの「Oracle OpenWorld」での米Oracle CEOラリー・エリソン氏の「salesforce.comのアーキテクチャが10年遅れている」という発言に、ベニオフ氏の発言は真っ向勝負をかけるもの。Oracleがその際に発表した「Oracle Exalogic Elastic Cloud」を、“偽物”と言い切ったというわけだ。

 エリソン氏は仮想化技術を使って「Elastic(伸張性、柔軟性)があるのがクラウドコンピューティングであり、salesforce.comのマルチテナントの仕組みはこのElasticがないから駄目だよね」と言い、一方のベニオフ氏はクラウドは「箱じゃない(箱を買うことじゃない)」と言い、仮想化はコンピュータの利用を効率化できるかもしれないけれど、それでクラウドコンピューティングができるというわけでもないと言う。そして、クラウドはソフトやハードから解放されることこそが重要だと主張するのだった。

 このクラウドの定義を巡る争い、いったいどちらが本物なのだろうか。個人的にはどちらの主張も間違ってはいないかなと思っている。要は立場の違いみたいなもので、クラウドのEnabler(有効性)に今のところ徹しているOracleと、いち早くSaaS(サービスとしてのソフトウェア)、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)と展開してきたsalesforce.comというそれぞれの立場から、別々のベクトルで主張を展開しているようなものか。

 ちなみに、ベニオフ氏は仮想化を否定しているようにもとれるが、実際はOracleがかねがね主張しているデータベースの仮想化技術は、大いに自社サービスでも活用しているはずだ。そもそもこのエリソン氏とベニオフ氏は師弟関係であり、仲が良いことは周知の事実。そう考えると、両者のこのののしり合いはちょっと出来レース的なところもあるのではと思えてくる。この2社がクラウドコンピューティングの注目のプレイヤーと市場に思わせることには、結果的に少なくとも成功しているわけだし。

 個人的には、クラウドコンピューティングの“本物”がsalesforce.comでもOracleでもどちらでもいいかなと思っている。というか、クラウドなんてどうでもいいのだ。要は、自分たちが解決したい課題に向いているコンピューティング環境はいったいどれなの、という話であって、“本物のクラウド”をユーザーは求めているわけではない。仮にそれが偽物でも、自社の課題を解決してくれるのならそれを選べばいいわけだ。自社でプライベートクラウドの環境を構築したければOracleのソリューションを採用することになるだろうし、あるアプリケーションを楽に運用したいと思えばsalesforce.comを選ぶことになるだろう。

 実際、今回弊社がCloudforceに出展することになったのは、どちらかと言えば後者のような課題を解決したかったからだ。われわれのような弱小ISV(独立系ソフトウェア会社)がアプリケーションをパッケージ化して売りだそうと考えた場合、PCなりにインストールして使ってもらおうとすると、そのサポートの負荷は大きな負担となる。さまざまな環境でテストをする必要があるだろうし、何かトラブルが発生すれば顧客のもとに赴かなければならない。それがsalesforce.comのようなプラットホームであれば、唯一の環境でテストするだけで提供できるし、サポートもWeb上で完結する。

 実は、Oracleのエリソン氏も同様な指摘をしている。同社の「Oracle Exadata Database Machine」や「Exalogic Elastic Cloud」はハードウェアアプライアンスの形で提供されており、環境は1つに統一されている。なので、パッチも1種類でいいし、世界中のユーザーが同じ環境を使うのでサポートの効率が大きく向上するのだと主張している。立場は違えどもメリットの方向性は一緒ということか。

 われわれがsalesforce.comのPaaS環境を選んだもう1つの理由は、開発の容易さもある。マルチテナンシーなためにさまざまな制限があるのも事実だが、それを理解した上でそれに抵触しないようなアプリケーションを作れば、かなり高い開発効率が期待できる。また今回は、われわれの給食栄養管理のアプリケーションと、介護施設の入居者管理をするコーネッツ社のアプリケーションを連携させるということも行った。このような他社アプリケーションとの連携も、同じsalesforce.comのPaaS上にあるので、ほんの3日ほどでできてしまった。スタンドアロンのサーバにインストールするタイプのアプリケーション同士では、さすがにこうも素早くはできなかっただろう。

 クラウドコンピューティングのどれが本物かではなく、ユーザーはなにが自分たちに適しているかを冷静に判断する必要がある。salesforce.comもOracleも、さらにはMicrosoft Azureでも、それぞれに長所、短所があり、それらが世間でどう評価されているかではなく、自社がやろうとしていることにどれだけ合致しているかこそが重要なのだ。

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